第27話 次なる行事
突如として行われた遠征から数ヶ月が経ち、今現在は俺たちが学園を通い始めてから 3ヶ月ほどの月日が流れようとしていた。
その間は特に記憶に残るようなイベントや事件が起こることもなく、俺たちは平穏な学園生活を送っていた。
「ユーリ、この後二人きりでお昼一緒に食べない?もちろんいつもの場所で」
「いいですが、なにか話でもあるのですか?」
「べ、別に用事がなくてもあなたを誘っても構わないでしょ!ただ単にあなたと一緒にお昼を食べたい気分なだけよ」
「そうですか」
しかし変化したことといえば、このように遠征が終わってからはメリルさまの方から昼食に誘われることが増えた気がする。
俺もメリルさまとの会話は楽しいし、何よりとても可愛く、姿を見ているだけで目の保養になるため、こちらとしても不満はなかった。
逆に一つ懸念があるとすれば、魔法技能試験以降ずっと大人しくしているバウラの存在だ。
あれほどの啖呵を切っておきながら、そのあとは俺だけでなく、ゼルドさまやメリルさまにすら接触してこないのは意図的としか考えられない。
もちろん俺の考えすぎで、俺の魔法を見てバウラの心が折れたという可能性もあるにはあるが、あれだけプライドの高い男が簡単にそうなるとは考えにくい。
このままゼルドさまやメリルさまに接触されることなく、卒業してくれるのが理想だが、おそらくそうはならないと俺の感が訴えかけてくる。
とはいえ今は特に動く素振りも見せていないため、俺はバウラに警戒しつつ、学園生活を送っている。
そんな俺の前に、新たなイベントが幕を開けるのであった。
「今日は皆さんに一つお知らせがあります。来月の頭に剣術大会が開かれることが決まりました。参加できるのはこのユーレシス魔法学園に所属する生徒のみで各クラスから2名を選出し、その選出された生徒たちでトーナメントを組み優勝を狙うという大会です」
「質問いいですか?」
シーナ先生の説明にひと段落つくと、一人の生徒が手を挙げた。
「なんでしょうか?」
「説明を聞くにこの剣術大会というのは全ての学年が参加するということでしょうか?」
「ええ、もちろんそうですよ」
そうシーナ先生が答えると、クラスにざわめきが起こった。
「俺たちまだ学園に入学してから全然経ってないのに先輩たちと戦うっていうのかよ」
「勝てるわけないだろ」
「それに私たちは魔法科だし剣術科の生徒たちに勝てるわけないよね」
などとクラスメイトたちの諦めの声が俺の耳には入ってきた。
だが俺はその意見には同意できなかった。
「本当に強い人にとっては学年や年齢、専門分野など関係ありません。ちなみにですがこの学年の3組担任であり、あなたたちの剣術技能試験を担当したキース先生は昔、一年生でさらに魔法科所属でありながらこの大会で優勝しましたよ」
そんな話を聞かされ、さらにクラスのざわめきは大きくなった。
そしてシーナ先生は続ける。
「学年や専門分野などを言い訳にしないでください。自分の今の実力を信じ、優勝するという強い意志を持った人は立候補してください」
しかしクラスメイトは誰一人として手を挙げなかった。
やはり上の学年の生徒や剣術科の生徒を相手にするには荷が重いとみな感じているのだろう。
出場したい生徒がいるのであれば、すでにキース先生に勝っている以上、俺はそこまで剣術大会に興味を感じないので、譲ってもいいと思っていたが、どうやら誰もいないらしい。
それならば俺としては自分の腕を試すいい機会なので、喜んで参加させてもらおう。
そう考え、俺は右手を挙げた。
俺の挙手に気付いた生徒たちは「おお」と感嘆の声をもらしていた。
しかしバウラだけは若干だが口角が上がったように見えたが気のせいだろうか。
「あと一人、誰かいませんか?」
シーナ先生は俺の挙手を見て、あともう一人の志願者を呼びかける。
そうすると、今度はあっさりと一人手を挙げた。
「ユーリくんが出場するなら、僕も出場するしかないよね」
そう言って、俺の隣に座っているゼルドさまが手を挙げていた。
「では今回の剣術大会の出場はユーリくんとゼルドさまに決まりました。みなさん、異論はないですね」
シーナ先生に異論を唱える生徒はもちろんいなかった。
「では以上です。二人には後日詳細な概要について説明します。もう解散して大丈夫ですよ」
そう言ってシーナ先生は教室から出ていった。
それと同時にクラスメイトたちは俺たちのもとに集まって、エールなどを送ってくれた。
気持ちは嬉しいのだが、一人一人相手にするのはなかなかに大変だった。
「それにしてもまさか僕たちが剣術大会に出場することになるとはね」
下校時に俺たち三人になると、ゼルドさまが俺に声をかけてきた。
「クラスメイトたちからすれば順当だと思いますけどね。剣術技能試験の内容を考えても、俺とゼルドさまの実力がクラスの中でも飛び抜けているのは明白ですから。ですが・・・・・・」
しかし釈然としないことがあるのもまた事実だった。
「バウラくんかい?」
「ええ、てっきり目立ちたがり屋であろうバウラは出場するのではと思っていたのですが」
今回もバウラは動きを見せなかった。
俺はどうしてもバウラが何か大それたことを企ているのではないかと思わずにはいられないのであった。
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