2話
「んん~おいひい!」
「オニ―さんいいたべっぷりネ」
「だって君のおすすめ、はずれがないんだもん!」
「ナンパはうちじゃ厳禁ネ。お世辞として受け取っとくネ」
えー、と残念がりながらも、ルーは運ばれた桃饅頭をほおばった。
勝手に一人行動をしているルーは、勝手にふらつき、勝手に店に入り、店の看板娘に勧められた商品を食べていた。
なお、悟への報告は一切ない。
そもそもルーは勝手に悟の仕事についてきて勝手に相方面をしているのだから、そんなルーに報連相を求める難しさは想像に難くないだろう。
看板娘のつやのある赤い肌とバランスのいいボディに視線を送りながら、ルーは炒飯で頬を膨らませる。
「ああいう子もありだよね、悟……あれ、悟?」
「オニ―さん、これお会計ネ」
「えっと……いま、悟が、迷子みたいで……」
今頃になって悟がいないことに気づいたルーは、気まずそうに目をそらした。そもそも女性に卑しい目を向けた時点で、悟の拳骨が飛んでこないことに気付くべきだったというのに。
「見逃して♡」
ね?と小首をかしげるルーに、しかし看板娘は厳しい。
「アイヤー……店長!」
この店は無銭飲食も厳禁だ。
厨房からのそりと現れた店長に、ルーは苦笑いをした。
ガシャーンと檻が冷たい音を立てて閉じる。
「だしてよぉぉぉ冤罪だよぉぉぉ」
「現行犯逮捕でどの口が言っておる」
「悟がお金持ってるからさあぁぁぁ」
「そいつおらんかったから捕まったんやろが」
「あいたっ」
二人の兵士に小突かれ、檻にすり寄っていたルーはのけぞる。
「ん?」
緩んだルーのターバンに、兵隊の視線が取られた。
ほどけたターバンから漏れる、白い長髪。いや、白色ではない。ランプの光を反射するそれは、まるで宝石でできた糸のように輝いていた。
「おいこりゃぁ」
「ああ」
兵士たちは檻の扉を開けた。
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