3話

 悟は走っていた。

「クソガキがああああっっっ!!!」

 追う相手はルーではない。

悟は地面を蹴り距離を詰める。一瞬で詰め寄った悟は相手の襟首を掴んだ。

「手間とらせやがって!」

「ひいぃっ」

 悟につるされた少年は、その剣幕に悲鳴を上げる。ばたばたと逃げようとするが悟は腕を緩める気はなかった。

「クソガキが、俺の鞄どこやった」

「し、しらない!」

 悟はルーを探していたところ、少年に置き引きをされたのだ。

「しらばっくれんじゃねえ!」

「うわあぁぁぁっ」

 悟は大きな水路の上に少年をぶら下げる。雨は止んでいるものの、水路はごうごうと濁った赤茶の水が流れ、泳ぎに心得がある者でも流されそうな勢いだ。

「うっ売っちゃいましたっ」

「あんだとぉ!?」

「うわあぁぁん言ったのにっ」

 周辺に人が集まり始めた。悟は人の目を気にしながら、短く舌打ちをし少年を俵抱きにして連れ去った。

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