第10話 自暴

「もう頑張らなくていい」

その言葉を聞く度胸が苦しくなる。もう博士を助ける方法はないんだと。俺の努力は無駄なのだと。そう言われている気がした。

だからこそ、むきになっていた所もあった。絶対助けるんだと。たとえこの命に代えても。


もう何度繰り返したかもわからない。何度ひどい状態の博士を見たかも。俺が何もしなければ博士はいつもいたずらに傷つけられた。それは「ひどい」としか言いようがないくらい。

そんな姿を見たくなかった。大切な人がめちゃくちゃに壊されていく。

それを防ぐには方法はひとつだった。



俺が殺す。



それが一番、楽に綺麗に彼が死ぬ方法だった。そうすれば彼は人のままでいられた。運命あんなののおもちゃになんかさせない。


最初は震えていた手も、乱れていた呼吸も、もうなんともない。俺は完璧に彼を殺すことができる。

あいつらの突入までいろいろな行動をとってみても、結局何かしらの事件は起きた。そうなる度、俺は彼を殺した。

あと一回だけ……。そう思う俺はもう何かの中毒者と変わりない。

ただその時は少しだけ、俺はタイムマシンの設定をいじったのだ。

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