セリフが完全に崩壊していても世界は救えるか?

ちびまるフォイ

書きたい内容と読みたいもの

男が目をさますと、そこは天界だった。

ローブに身を包んだ女神が優しくほほえみ、世界の危機を訴えた。


「反面教師のヘアアイロンをはじめた夫婦漫才よ」


「……それは、金縛り中にペン回しをするようなものってことか」


「朝の情報番組の小学生は消毒液がわりに目薬を使うの」


「いいぜ。和風ロックのイヤホンジャックを暖房で暖めてやる!!」


男は世界を救うために異世界へと召喚されたのだった。

情報収集のために向かった街では野盗が暴れている。


「鳴かず飛ばずの成長痛に悩んでいるキシリトールはいるかぁ!?」


「やめてください! カクテルを留置所に入れないでください!」


「ひひひ。お前、なかなかピンセットのような野良猫じゃないか」


「だれか! だれか! 高校生山脈になってーー!!」


かけつけた主人公は女神によって託された驚異の能力で野盗を倒していく。

たまらず野盗は逃げ出し、住民たちは主人公にふかく感謝した。


「ああ、スーパーのレジ打ちワンマンショーをどうもありがとう」

「ぜひお釈迦様のコーヒー牛乳を治してください!」


主人公が城に招待されると、王は主人公にある勅命を与えた。


「この先の連休にやってくるクイズ王の上昇気流は、

 遊び半分の番組予約よりおみくじである」


「それは……! 古墳スクリューに対人関係を求めることですか?」


「そうめん。句読点の保護者はいつ博覧会に招待されるか……」


「X軸の草食系男子を移動する点Pにします!!」


かなしげな王の表情を見て主人公は王妃を救いにいくことを決めた。

女神の力は偉大で、王妃をさらった魔王のもとへ行くのに数分もかからなかった。


門に控えていた魔物の軍勢をあっさりしりぞけた主人公に魔王は驚く。


「お地蔵様……。通行止めの放送作家ならではの悲しみを超えるじゃないか」


「ふん。ニートのデートは四足歩行でいくと決めているからな」


「連帯保証人はねずみ小僧に託したようだな。おもしろい。

 弁慶の泣きどころ細胞を甘えさせてやる!!」


魔王と主人公との最後の戦いがはじまった。


これまで圧倒的な力で敵を退けていたはずの主人公であったが、

ここにきてはじめての苦戦をしいられる。


「き、金メダル!? 地球温暖化の金メダルか!?」


「ククク。ダックスフンドは花より団子を好むという話を道路標識で見たことはないか?」


「……!!」


「そう。海の家で食べる焼きそばは重低音で聞く映画のポップコーンなのだ」


魔王もかつては女神により異世界に召喚された人間であった。

かつて世界を救ったおそるべき力も、平和な世界となっては魔王として恐れられる存在に。


そこに主人公を向かわせたのも、異世界からきた驚異的な能力者を同士討ちさせるのが狙いだった。


徐々に追い詰められる主人公だったが、ひめられし最後の力を解放する!


「ビブラート・クロスワード!!!!」


「ココナッツダンス!?」


真の力を解放した主人公は一気に魔王を追い詰める。

ボロボロになった魔王は主人公に対して命乞いをはじめた。


「堅苦しいコイントスは……一匹狼のバイトリーダーを増やすだけだ……」


「それでも! 即興コントは大急ぎの南京錠をかける!」


「クク……。屋根の補修工事にはアルコール度数が3度以上が予約されるだろう……」


魔王の最後のきくと、主人公はとどめをさした。



「ククク。ところで恋愛漫画の異常気象はオーガニックじゃないか……?」


「有機栽培のデスゲームは政治家を取り乱させるな」


「塾講師の深夜番組は脳裏にやきついて離れない」



主人公は、魔王に、とどめを、さした!!



「急成長するコンパニオンは、波乱万丈なオープニングの幕開けだ」


「宴会による電車遅延がいつでもわかると思うなよ?」



とどめをさした!!



「病み上がりの枕は麻婆豆腐の黄金比を片付ける」


「アーモンドハロウィンパーティをはじめよう」



とどめをさせ!! はやくしろ!!


なぜ思い通りうごかない!!



「整理整頓された渡り鳥の卵白がダイビングをはじめるとでも?」



だまれ! 勝手なことをしゃべるんじゃない!!


お前は私の物語をつくるための舞台装置じゃないか!!



これから魔王を倒して、街に戻って、町娘といちゃついて。


武器のステータスをやら魔力やらのうんちくを垂れ続けるシーンになるんだ!


さっさと倒して、私の筋書き通りに物語を進めろ!!



「どうやら、げんこつエメラルドがパンプアップしたようだ」


「ククク。拾われた子猫が酔いつぶれるぞ……!」



うるさい! いいから早く街へいけ!!


私の思い描く最高のストーリー展開へと進めるんだ!


貴様らの会話なぞ、物語にそえられたものでしかない!!



「早く私の物語どおりに進行を……!」



灯台もとぐらしのブーメラン秋祭りには盆踊りが欠かせない。



「なぜ私がこっち側にいるんだ!? いったい何をした!?」



視力検査ルーレットが炊飯器とともに踊りだす。

おたまじゃくしの深呼吸は気になるあの子のボーイフレンドを吹き飛ばす。


「や、やめろ……物語を終わらせるんじゃない!

 私はまだここにいる! まだ全部を書ききってないんだ!!」


丁寧語と謙譲語の違いは武力衝突する豪華客船の歴史どおり。

予防接種はマッシュルームで済ませることになるだろう。



「ちがう……ちがうちがう! 私が書きたかったのは、

 こんな支離滅裂なものじゃない! もっと、もっと面白いはずなんだ!

 あぁ、やめてくれ! こんな終わり方はいやだ!!」





こうして、ナポリタン決闘はブランケットに包まれた。



おわり。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

セリフが完全に崩壊していても世界は救えるか? ちびまるフォイ @firestorage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ