第4話 幼馴染だ!
「国矢? あの子、知り合い?」
怪訝そうな本庄の声がして、ハッと我に返って振り返る。
「あ、いや……どうなんだろう」
「『どうなんだろう』?」
どこかで見たような感じはする。
ただ、いつどこで――というところまでは思い出せん。そもそも、俺はずっとまりんだけを見てきたわけで。それ以外の女子は、まりんと交友関係がない限り、その存在を把握しようともしてこなかった。
だからまあ……無意識下で視界に入って、深層心理に面影が残っていた誰か――ということもあり得るか。
しかし、本庄は知らない様子だし。同級生という可能性は低い……か?
とりあえず、だ。彼女がどこの誰か、は分からんが――。
「『どっか行け』とか言われてもさ、同じ学校だし」
「だからって着いて来ないでよね! もう別れたんだから馴れ馴れしくしないで」
それは俺や本庄と同じブレザーの制服を着た男だった。常にパーッと
とにかく……そんな読モ風の男子学生が、ショートヘアのその子にバスケのディフェンスさながらにまとわりついていた。
なかなか鬱陶しそうだ。
「なぜ揉めているかは皆目見当つかんが……ちょっと行ってくる」
「見当つかないの!? いや、かなり分かりやすい――って、『行ってくる』!?」
なぜかぎょっとする本庄を背に、俺は二人の元へとズカズカ距離を詰め、
「いきなりブロックされても意味分かんねぇ……」
ちょうど、男の手が彼女の肩をガシリと掴みかけたときだった。滑り込みセーフで、俺はその手首を捕まえ、
「『どっか行ってほしい』と言っているのだから、どっか行ったらどうだ?」
「は……?」
眼をまん丸にして俺を見上げる読モ風男子生徒。
誰だ? ――というその反応が、もはや新鮮にすら思えた。
そういえば……しばらく、訊かれることもなくなっていたもんな。俺が何者かなんて、中一の半ばくらいまでには学校中に知れ渡っていたから。
中学に入ってから、何かというとまりんはどこの馬の骨とも知れん男に呼び出されていた。どんな要件か――なんぞ知ったことではない。人目のないところにコソコソと呼び出さなきゃならないような要件など、どうせロクなことではないに決まっている。そうしてまりんに狼藉を働こうとする不逞の輩が現れれば、俺は漏れなく駆けつけた。
そして――、
「お前……なんだ!?」
久しぶりにそう訊かれ、つい、反射的に――まるで長年、この身に染み付いた癖みたいに――俺は名乗っていた。
「俺は国矢白馬! 彼女の幼馴染だ――」
言ってから、すぐにハッとして口を噤んだ。
あ、しまった。つい……!
「幼馴染だ?
訝しげに訊き返され、
「いや、すまん!」と慌ててすぐさま訂正を入れる。「つい、習慣というか常套句になっていて。俺は決して、イチハちゃんの幼馴染では無……!」
え――?
イチ……ハ……?
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