1:30

ベネルクス王国首都国王直轄領ブリュッセル。

外側アウターエリア。


「クソ・・・何でこんな事に・・・」


ミューはブツブツ言いながら歩いて行った。

何故かナンナと兵隊は逃げ出して自分達は後を追ったが

自分は置いてきぼりになってしまった。

仕方なく移動しようにもハウバリン公爵門閥の連中が動いているので

ここは安全を取ってズベイ商会に行く事にしたのだった。


「・・・・・え?」


ミューの前に立会人№266とポールが現れた。


「ま、 待ってくれ、 俺はレオポルド殿下達とはぐれて彼等の場所は知らないんだ」

「君に決闘を申し込みに来た」


ミューの言葉に端的に用件を伝えるポール。


「決闘だって?」

「特例により貴方の意志は関係無いと先に行っておきます」


立会人№266が淡々と述べる。


「・・・・・」


ミューは全力で逃げた。


「待て!!」


ポールの声を背に逃げるミュー。

ポールの方が身体能力は上だが

ミューにとっては勝手知ったる王都地元

路地裏、 抜け道、 近道、 全てを通過してズベイ商会に向かうのだった。

ズベイ商会の灯が見えて来た。


「父さん助けて!!」


ミューが叫びながら商会に飛び込む。


「・・・・・」


絶対零度の視線を向けながらズベイ男爵はじめ従業員がミューを睨む。

彼等全員は既に手錠がかけられ騎士達に連行されようとしていた。


「え? え? え?」

「ミュー!! 貴様!! 何を考えているんだ!!」

「え? え? え?」

「お前達がやらかしたお陰で俺達はおしまいだ!! 何やってるんだ!!」

「え? え? え?」

「俺が築いた商会も終わりだ!! お前のせいで!!」

「し、 知らないよそんなの!! それよりも助けて!! 今追われてるんだ!!」

「・・・・・」


騎士の1人が手錠を持ってミューに近付く。


「ひぃ!!」


ミューが慌てて商会から出るとポールが来ていた。


「では両者名乗りを」


立会人№266が淡々と述べる。


「ベルモンド家三男、 ポール」

「ひぃ!! ひぃ!!」


逃げようとするミュー。


「逃げるな!! せめて誇りある最期を遂げろ!!」

「何が誇りだヴァカ野郎!!」


ミューは全力で走った。

が転んだ、 前から騎士もやって来た。

もう逃げられない。


「嫌だ!! 助けて!! 死にたくない!! 死にたくないいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」

「・・・・・立会人、 私はもう名乗ったのだから攻撃しても良いよな?」

「問題無いですね」


ミューを背後から殴り飛ばし地面に激突させ、 頭を踏み抜き始末するポール。


「勝者、 ポール」

「素直に戦っていれば名誉だけは守れた者を」


立会人のやる気のない宣言に哀れみの言葉をかけるポール。


「で、 他に居場所が割れているのは?」

「他は・・・あ」

「あ?」


立会人№266が指差した方を見るとそこにモモレードが立っていた。


「側近の中の唯一の平民、 か」


ポールがモモレードに近付く。


「待った」

「?」

「場所を変えよう」

「・・・逃げるなよ」

「逃げるなら最初から前に出ないさ」

「それもそうか」


モモレードの後について行くポールと立会人№266。





一方その頃ジュンはベローダ伯爵のブリュッセルハウスでダーロングを見下ろしていた。


「がっ・・・がはっ・・・」


ダーロングは血を吐きながらジュンの足元に横たわっていた。

ジュンは刀を振って血を落として刀を収めた。

ダーロングはジュンの初太刀を回避し損ね、 肩から腹迄を裂いたのだった。


「伊達に騎士団長の息子じゃないのか、 真っ二つにするつもりだったが・・・」

「勝者、 ジュン」


立会人№715が宣言する。


「ま、 まて・・・まだ終わってない・・・」


ダーロングは掠れ掠れに喋る。


「まだ喋れるのか、 でも既に終わっている」


ジュンは屈んでダーロングを見る。


「がふ」


ダーロングは血を吐く。

ジュンに血がかかる。


「本当だったらお前の首を刎ねてさっさと次に行くべきだろうが

死んだのを確認してから行く事にしようと思う」

「・・・・・」

「悪いが介錯は無しだ、 そのまま苦しめ」

「・・・・・」


ダーロングの目線が揺れ動き、 涙が溢れ出す。


「泣く位ならこんな事」

「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


老執事が鈍器を振り上げてコッチに向かって来る。


「・・・・・」


ジュンは立ち上がり、 横にずれる。

老執事はダーロングの頭に鈍器を叩き込む。


「うっ・・・う・・・」


老執事は泣きながらダーロングのむくろを抱えた。


「・・・行くか」

「ですね」

「アンタ!! 何も感じないのか!!」


老執事に呼び止められて振り返るジュン。


「坊ちゃんは確かに良い奴では無い!! しかし「じゃあ何か感じ取って居れば殺しても良いのか?」


ジュンは端的に吐き捨てた。


「文句あるならかかって来い、 ぶった切る」

「・・・・・」


おし黙る老執事を後目にジュンと立会人№715はその場を去った。


「あぁ言うの何とかならんかね」

「あぁ言うの?」

「決闘して相手が死んだ時やいのやいのいう奴、 地元セルデン伯爵領では居なかったのに」

「分からなくも無いですよ、 立会人をしていると非難される事は往々にしてあります」

「そうか・・・じゃあ次はベルクスタイン伯爵の所に行くか」

「ナンナの所じゃなくて良いんですか?」

「ナンナは最後にしておこう」

「何故?」

「ベルクスタイン伯爵のエルカーラもヤバイからな」

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