イフ・ユー・ウォーク・ドントシンク イフ・ユー・シンク・ドントウォーク

再誕歴7700年ノーベンバー26日。


『お屋敷にずっといてもしょうがないですよ!!

ここは街に出てデートするのが良いでしょう!!』


フローラに乗せられて領地の街に出たサン。

当然ながらサン御付きの執事となったフェザーも一緒である。


「あのー・・・お嬢様? 一体如何言う状況ですか?」


歴戦の戦士フェザーが困惑している。

サンとフェザーが腕を組んでいる。

サンとフェザーが腕を組んでいる?

サンとフェザーが腕を組んでいる!?

何が起こっている!? ここまで早く陥落するツンデレヒロインが居るか!?

この段階では最早何を言ってもツンとして成立しないぞ!?


「コーデ」

「コーデ?」


何処の世界に腕組みをコーデの一部に組み込むヴァカが居るのだ!!


「あぁ、 そう言えばありましたね腕組みコーデ」


ベネルクス王国恐るべし。

在ったのか腕組みコーデ。




サンの突拍子もない行動に面食らってしまったが少々冷静になって考えて見よう。

サンの腕組みは男女仲をステップアップさせるには強引ながらも有効である。

尚且つ外で腕組みをすると言う事は周囲にも男女仲で有る事をアピール出来る。

男女仲を勧めつつ外堀を埋める、 何という女子力※1 の高さか!!



※1:女子的ウィルパワー、 恋愛についての行動力を司ったりする。



(胸に手を当ててみようかな・・・でもはしたないと思われるかも・・・)


サンは心臓を鼓動を速めながらそう思った。






「サン様、 フェザー様と歩いてる・・・」

「羨ましいわぁ・・・」

「ステキ・・・」


街の女性はサンとフェザーを見て羨ましそうに見ている。

現実としてフェザーは街の女性達から人気である。

言い寄る女性も大勢居たがきちんとフェザーは一人一人に応対をしており

女性関係は綺麗にしている。

これは彼の育ての親バロックの指導もある。

『女程恐ろしい生き物は居ない、 生涯を共にする伴侶は慎重に選べ』と

フェザーは誠実な対応をした為、 後腐れ無く女性達も身を引くのだ。

勿論引いただけで諦めた女性は少ない。

しかしながら例外が居る者で・・・


「ぐぬぬ・・・」


洗濯婦のピラである。

彼女は諦める所か引いても居ない。

但し彼女は押す事もしていない。

勇気がないのではなくクレバーなのだ。

無暗矢鱈※2 に物事を進めるのは良くない。



※2:結果の是非を考えないことを意味する言葉の最上級。

無暗矢鱈という鱈は余りにも

無秩序な行動を取り過ぎて絶滅してしまったという故事成語からなる。



「ぎぬぬ・・・」


ハンカチを銜えて腕組みをするフェザーとサンを見るピラ。


「はぁー!! はぁー!! 落ち着け!! 落ち着きなさいピラ!!」


自分を必死に抑えるピラ。


(あの御嬢様が男の人と付き合える筈は無い!!

それに私だって最近は女を磨いている!!

フェザーさんとお付き合いできる可能性は充分にある筈!!

身分だって平民同士ならば擦れ違いはない!!)

「まだまだ・・・まだまだこれから!!」


歩いてその場を離れるピラ。


ドンッ。


「きゃっ」


ピラが誰かとぶつかり転ぶ。


「ちょっと何処見てるのよ!!」

外方そっぽを向いていた※3」



※3:前を向いていない。



ピラとぶつかったのはジョンだった。


「は、 はぁ?」

「お前は何処を向いていた?」

「・・・え?」

「お前は何処を向いていた?」

「ま、 前を向いていたに決まっているじゃない」


ジョンは深く息を吐いた。

そしてジョンはピラの胸倉を掴んで持ち上げる。


「う、 うわ!?」

「じゃあ君は前を向いていたにも関わらず私に当たったと言う事か?

平民の君が、 貴族の私に対して故意にぶつかったと?」


ここでピラは状況を把握した。

自分が考え事をしながら歩いたら貴族と激突するとは・・・

何と言う事か!!


「す、 すみません」

「すみもはんですんかあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!※4」



※4:日本の薩摩と言う地域の言葉。

謝っても許さないと言う意味。



「ひいいいいいいいいい!!!!!」


怯えるピラ。


「何の騒ぎよ」


サンがフェザーと共にやって来た。


「サン、 か、 お前の所の領民が前を向いていると言って

私にぶつかって来た、 一体如何言う教育を領民にしているんだ?」


挑発染みた言葉。

先にグレゴリオに言った通り

『適当に因縁付けて決闘を申し込んで勝って嫁にする』と言う計画の為の

過剰なパフォーマンスである、 ジョンの名誉の為に言っておくが

本来のジョンはぶつかった程度でここまで怒る事はない。

ジョンはそんな事で怒ったりしない。


「相変わらずね、 大の大人が女子供にぶつかってマジギレって・・・

男らしくない」


寛容なジョンでもこのセリフには怒髪天と剣を抜いた。


「!!」


柄がフェザーに抑えられて剣が抜けない!!


「イ、 イェエエエエエエエエエエエエエエエ!!」


ジョンは前蹴りをフェザーに放つ。

それも掴まれた。


「・・・・・名乗れ!!」

「サン御嬢様の執事をやっていますフェザーと申します」

「っ!!」


余裕を持ったセリフに歯軋り。


「ここは下がって頂きましょう」

「・・・・・分かった、 良いだろう、 一回は下がろう」


剣から手を放し足を下ろすジョン。

フェザーも柄と足から手を放した。


「ここは決闘で決着をつけようでは無いか!!」


ジョンは宣言したのだった。

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