第32話

「お友達になったの?早いねぇ…」


「紗絵ちゃん楽しそうだったよ」


さすが紗絵さん。コミュニケーション能力高い。双子の話か。ちょっと、疎外感。

雷くんはお友達のこと心配して、紗絵さんの様子を見に帰ってきた。お仕事はほったらかして。


「雷くん、仕事は?」


「そうだった。じゃ、戻るね!」


雷くんのお仕事は深夜が多い。仕方ないけど。


「おはようございます」


私はブライダル会社で経理事務をしている。だけど、裏方なのに表に出されたりもして、大変。


「ドアの開け閉めよろしくね」


主任から仕事を言い渡され、仕方なくドアのとこに立っている。はうう。通行人に見られるし、ナンパされる…。


「君、今から暇?」

「いつもここにいる?また会えるかな?」


はぁ…怖いよ。近寄らないでー


「お客様、なにかお困りでしょうか?」


そんな困ってる私に、話しかけたのは…ここの社長!ぺこりと頭を下げてる間に誰もいなくなった。


「頭を上げて」


「はい、お、お疲れ様です。ありがとうございます…」


社長はきりっとクールな感じの、できるお姉様って感じ。


「あら?あなた最近結婚した河西さん?」


「はい!河西です!」


私のことちゃんと知ってくれてる!胸を張ったところ、ボタンがぷちーんと飛んだ。


「す、すみません!」


「ちょっといらっしゃい」


社長に引き連れて、社長室までたどり着いた。ここにお茶持ってったことある。


「ボタン止めてあげるから、脱いで」


こんなとこで、下着になるなんて。


「すみません…ありがとうございます」


「それ、動きづらくない?うちのにしたらサイズも下げられるわよ?」


なんの話?下着?ていうかサイズ下げる!?


「え、そんなものが」


「はい、シャツ完成。早速買いに行きましょ。支度して。仕事はもういいわ」


ええー?

社長に連れられて買い物。ここは、高級ランジェリーの!あれよあれよと試着させられた。


「こ、こんなかわいいのがこのサイズで!…あ、でもお金」


「お祝いにあげる」


「え!あ、すみません!」


なんのお祝いかな?


「河西さん、ちょっと触ってもいいかしら?」


「はい…?」


なんのことだろう?


「うわ、でけぇー。また買いにきてね。じゃあ仕事戻るから」


社長…胸の触り逃げ?


「お客様。とってもお似合いですよ」


「ありがとうございます」


「旦那さまも喜ばれますね」


そっか…これは結婚祝いだったのか。ここのお店、細川グループのなのか。うちと同系列。


「雷くん、見て!」


帰るなりシャツなど脱ぎ捨てた。


「なにー?新しいの?」


「社長がくれたの。今日シャツのボタンが飛んじゃったの!」


「え!飛ぶの?」


「よくあるの」


「紗絵ちゃんはないと思うけど」


お姉さんごめなさい。

でも、雷くんに着やせした私を見せられて嬉しい。


「あら、河西さんウキウキね」


翌日の朝も、社長に会った。


「社長、おはようございます」


「旦那さん喜んだ?」


「…はい、ありがとうございます」


喜んだのは私ですが。


「河西さん、困ったときは社長呼びますけどって言ってちょうだい」


「はい、ありがとうございます」


「今日は歓迎会だけどあなたは知ってる?」


「え…」


前に聞いたけど、すっかり忘れてた。歓迎されるのは…私?


夢路ゆめじさん浮かれた話なんてしてなかったのにー」

「いつのまに?」


歓迎会では、いつもよりプライベートな話に。ここは女子社員多いからね…。


「ここに入る前です…」


「どんな人?」

「イケメン?」


「ふ、普通です…」


雷くんごめん。イケメンとまではいかないかな?


「いーわねぇー。きゃっきゃっしてて。私にも紹介してよ」


社長は今日はとても陽気だ。


「隙がないんですよね、社長は」

「もっと余裕なくしてください」


「は?私のどこがいけないわけ?河西さん、どんどん飲みなさい。ワインいくらでもあけていいから」


えーお金持ち。


「あ?河西さん指輪ないの?式も上げないわけ?」


社長がどんどん絡んでくる。


「すみません、ちょっとお金なくて、貯めてて…」


「ふーん、偉いのね。ま、経理頑張って」


はい、社長。帰りはお菓子のお土産を頂いた。


「ただいま、酔っ払っちゃった-」


久しぶりにお酒を飲んだから、くらくらする。


「おかえりー!なにそれー?」


雷くんはお土産の紙袋が気になってけど、押し倒して、キスする。雷くんかわいいなー


「お、俺帰るから」


バタバタと誰か帰った?


「ゆ、ゆきのちゃん!息できない!」


「ごめんね…もう、我慢できないよ」


「トイレ?」


「違うー雷くんのこーとー」


「ね、ねぇ、悟流に見られたよ、ちゅーしてるの」


「雷くん、私のこと見てよー」


「見てるよ!もーゆきのちゃんってばー」

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