第30話

「姉は真奈っていうモデルなんだけど…」


「モデル?ファッションモデルのことですか?」


「そう。敬語いらないから。同い年だし」


「あ、はい。それで?」


「彼氏がカメラマンで、なんか騙されてないか不安なんですけど」


「優しいね」


冷静で、雷とは大違いだ。


「真奈って勉強しかできないバカで。なんとかさ、いい人とつきあわせてやりたいわけだ」


「大きなお世話って言われるね」


「ですよね…」


「でも、何かあったらいつでも助けてあげなくちゃね」


「そう、だよな」


「私、雷のこと嫌いなときがあったの」


「うん」


「雷は人付き合いが苦手で。距離が掴めないし、よく暴れてて。その度に私は先生に呼び出されてたよ」


「問題児だな」


「雷は、いつも自分を主張してる。でも私が悩んだり迷ったりしてるとすぐに気付くの。雷は私のこと大切にいつも思ってくれる。なのに突き放そうとして後悔したこともあったの」


「俺も。中学で真奈は地味だったし、頭いいしむかついたから無視してた。俺は派手な格好で親に嫌がられてたけどさ」


「そっか。雷はいじめられることが多かったんだけど私には言わないの。紗絵ちゃんに迷惑かけたくないって。雷は勉強が全然できないけど、先生に気に入ってもらえて高校入ったの。お父さんたちが心配してたから、無理して、入った。私、お店の手伝いするものだって思ってたからびっくりして。偉いねって褒めてあげたら、すごく嬉しそうだったの。雷は、自分で頑張りたいの」


「そっか」


なんかすげー情報が多くて処理できなかったけど、まあいいや。


「私は、雷が好かれることが嬉しいよ。お姉さんも好かれてるしいいんじゃないかな」


「まあ、そのくらいに考えてたほうがいいってことだよな」


「心配なら連絡したらいいよ。姉弟なんだから」


「まぁ、そうなんだけど」


「遠慮しなくていいのに」


「…いや、今日会ったばっかなのにかなり遠慮ないよな」


「それ私のこと?」


「そう、ずけずけ言うじゃん」


「雷にわかるようにしないといけないから」


「あーそれでなんだ」

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