訪問

第29話

「あ、じゃあ、雷のこと、よろしくお願いします」


あのきのこ彼氏、見た目はあれなのにまじめなのかよ。そのままさっさと消えた。


「ふー、よかった!悟流と普通に話せたね!」


「うん。…紗絵さんすみませんでした…わざわざ呼んで頂いてありがとうございます」


「ううん。早川くん誰にでもひどい態度とったりするから。気にしないほうがいいよ」


おとなしそうなのにさっきのきのこの彼女で。この姉御肌な性格すげぇな。


「あのー、雷の何歳上の姉ですか?」


うっかり会話に入ってしまった。


「私、双子なんです」


「え…俺も双子」


「えー!?先人双子?弟いるの?」


「お前と一緒で姉だよ」


「そうなんですね」


似てない双子だ。性格が。


「先人のお姉ちゃんに会いたい!今どこいるの?」


「仲悪いから無理」


「えー、けんかした?」


「…中で話すか?」


「じゃあ私はこれで、お邪魔しました」


姉はクールに帰ろうとするので


「待って、1番聞いて欲しい!」


うっかり引き留めていた。


「私?」


雷夫婦とその姉を部屋に招き、お茶を出す。


「先人の奥さんどこ行ってるのー?」


「今日はどっかのカフェかな?マジックしてんじゃね?」


「なにそれ?」

「マジシャンなんですか?」


秀才な姉のようだ。


「そーいうやつかな」


「そうだったんですね。とても素敵な奥様ですね」


柚香は毛嫌いしてるのに、雷の嫁は素敵とか言ってるよ。申し訳ない。


「あのさぁ、双子だから趣味は一緒?」


「私と雷は、好きな食べ物は一緒です」


「じゃあ友達とかは?」


「悟流のこと好きだから一緒だよ!紗絵ちゃんのお友達もいい子だよ!」


「ふーん。俺の姉は、趣味悪い男と付き合っててさ、ほんと嫌なんだよ。これってさ、合わないってこと?」


「その彼とお話されたんですか?」


「したよ。でも、…無理!」


「紗絵さん、私のことは…どうですか?」


「ゆきのちゃんは雷によくしてくれるし、好きよ」


すげえ冷静だけど、本心なのか?


「あ、そーだ!仕事だった!」


急にその旦那雷は大慌て。いちいちうるさい。


「大変、準備しないと!雷くん帰ろう」


「じゃ、紗絵ちゃんゆっくりしててねー」


俺の家なんですが?2人は慌ただしく出て行った。


「帰りそびれてしまいました」


「まだ時間ある?」


「ええ。お姉さんのこと相談に乗りますよ」


なんだ、ばれてたのか。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る