うまくいかなくて

第11話

あんなこと言ったけど…そう簡単にはいかない。


「東大を中退?なんでまた」


「家庭の事情で…」


「君、ほんとは大学行ってもいないんじゃない?」


はたまた


「あなた男目当てなの?」


「違います」


「だって、その胸強調してませんか?」


違うのに…。


「あんたみたいなのが喫茶店?無理よ、なによその胸」


私、どうしたらいいの?


仕事が決まったらって…決まらないよ。

やっぱり風俗の仕事しか無理なの?だったらいつになったら雷くんのおねーちゃんに紹介してもらえる?


私…どうしていいかわからない。


「あの、河西さんって人働いてますか?」


「いないけど?」


気が付いたら、あちこちのライブハウスに入っていた。


「ここに河西さんって人働いてますか?」


「は?河西?…バカなやつ?金髪の?」


この人…バカにしてる。でもここにいるんだ。


「そうです。今日来ますか?」


「休憩中っすけど?なに、金返せってか?」


「違います」


「…おい河西!ちょっとこい」


「なんすかー?」


雷くんだ。声だけした。でもこの声に間違いない。


「てめー女に金たかったんだろ?ほら、キャバ嬢っぽい人来てるぞ」


「えー?キャバ?なにそれ?」


たらたらとやってきた雷くん。


「雷くん!」


「…あれ?ゆきのちゃん?」


「ごめんなさい、雷くん、助けて!私、1人じゃなにもできない」


全然説明になってない。どうしたら…


「おいおい、泣かせてんじゃん。なにしたんだよ」


「どうしたの?お腹痛いの?」


「いや違うだろ?金がねーんじゃね?」


先輩らしき人は憶測で話す。


「違います!雷くん、私…どうしていいかわからない」


「うん?なにが?」


「雷くんのお姉さんに、いつになっても会えないかもしれない…」


「紗絵ちゃんに?よくわかんないけど、紗絵ちゃんに会ったらいいよ」


話が掴めてないみたいだけど…。でも、そうしたい。


「なんの話なんだ?とりあえずお前帰れ。金の話はきっちりしろよな?」


「なんかよくわかんないけど、帰ろうか」


「うん」


私から…仕事決まるまではって言ったのに。だめだな。17時上がりなわけないのに、雷くんに仕事中断させちゃった。



「なんで泣いてるの?」


歩きながらも、雷くん心配してくれてる。


「仕事が決まらないの、私…嘘つき呼ばわりされて。どうしていいかわからないの」


「難しいことは紗絵ちゃん得意だよ!」


難しいこと?

わからないけど、お姉さんに会うことになった。


「ほら、ここがうちー」


「お店から離れてるんだね…」


「うん!なんかねー、家一緒だと嫌なんだって。うちの親仲良しじゃないからねー」


「そうなんだ…」


「たぶん紗絵ちゃん家いるよ。勉強してるかも」


大学生か…いいなぁ。私だって普通に通ってたのに。

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