第6話

雷くんは理解できなかったみたい。


「あ、ごめんね。お金をどうしても返さないと辞められないの」


「そっかぁ」


「雷くん、私のことまだ好き?」


「うん」


「…ここ以外でも会ってくれる…?」


「いーよ!でもねー俺携帯止められてるから。うちはお店やってるからいつでもおいでよ!夜もやってるから!場所は、駅からは遠いんだけど」


こんな個人情報をペラペラと。いいのかな?

そうやって雑談して時間になってしまった。

雷くんは、ライブハウスのお仕事が今からあるらしいので忙しそう。


その日の夜、さっそくお店に行ってみた。


「いらっしゃい、なにか飲みます?」


居酒屋のようだ。雷くん、…まだいないか。


「…カクテルあります?」


「ごめんなさいねー。ビールと酎ハイしかないのよ。紗絵、メニュー出したげて」


「お待たせしました。すみません、うちメニュー少なくて。…壁にも貼ってあるんですよ」


これは雷くんの言ってた、紗絵ちゃん?声が似てる。


「…じゃあビールで」


「かしこまりました。お母さん、ビールで。おつまみは何がいいですか?」


「おすすめとかありますか?それをお願いしたいです…」


「お母さんおすすめのでいいって」


「じゃ、紗絵の好きなもの作ってあげて」


「私?」


あったかい。こんな素敵なところに雷くんはいるのか。

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