3話 モテる幼馴染 side雪菜
私には幼馴染がいる。名前は森山隼斗。幼稚園からの仲で家も近所ということもあり、昔からずっと一緒にいる。いや、私がひっついてるって言った方が正しいかも。なんでって、そりゃもちろん隼斗の事が好きだから。
自慢じゃないが、私はよくモテる。外見がいい事も身体の発育がいい事も理解してる。だからこそ気持ち悪いと思ってしまう。男は皆私の顔と胸しか見てない。まあ態度にはなるべく出さないようにしてる。
そんな私だけど、私以上に隼斗はモテる。勉強面は、テストでは常にTOP10には入ってるし、成績もオール5と優秀。バスケでは中学校から始めたのに2年でレギュラーになった。私たちが通ってた中学は元々バスケ部のレベルが高かったから、余計に驚いた。私は当然マネージャーだったのだが。最高学年に上がると隼斗はキャプテンを任され、全国大会決勝まで導いてしまった。
でも私は知ってる。隼斗が血の滲む様な努力を毎日欠かさずしてた事。レギュラーから外されないように、キャプテンとして頼られるために。レギュラー陣だけじゃなくて、ベンチの子とか、ベンチ外の子とか一人一人に毎日声がけをして、行き詰まってる子がいたらこうした方が良いとかアドバイスもしていた。だからこそ、部内の隼斗への信頼は分厚かった。
そんな隼斗のことを好きになるのはもちろん私だけじゃない。なんなら学校のほとんどの人は隼斗とお近付きになろうとしてたし、部活で遠征に行くと、いつの間にか隼斗の周りは女の子だらけになるし。全中で決勝まで行ったことで雑誌に載ったりして知名度も上がってから、隼斗の人気はとにかく凄まじかった。
だからこそ私は片時も隼斗から離れなかった。
もし隼斗が私から離れたらって考えただけでも気が狂いそうになる。私が可愛くなったのも隼斗のため、勉強も運動もできるようにしたのも全て隼斗のため。隼斗の隣にいたいが為に、隼斗に釣り合うように死ぬ気で努力してきた。
でも、隼斗は昔からくっそ鈍感だから当然私の気持ちとか、他の女子の気持ちになんて気づいてない。なんなら、自分がモテている事にすら気づいてない。でも、それでいいと思う。もし気づいてしまったら私から離れてしまうかもしれない。だから私は気持ちを伝えない。隣に居れるだけでも幸せだから。
そんな隼斗に、こんな質問をしてみた。
「ねえ隼斗、私また告白された」
「毎度ご苦労なこって。今回はどんなやつだったんだ?」
「サッカー部の先輩。ほら、あの女子から人気のあるあの人」
「ああ、あの人かっこいいもんな。付き合うのか?」
「いや、断ったよ?当たり前じゃん」
「はぁ、お前ほんと誰とも付き合わないよな。誰ならOKなんだ?」
「...さあ、ね。隼斗みたいな鈍感男には分かるわけないわよ」
「うるせえ!毎度毎度バカにしやがって...」
「だってホントのことだもん。てか、隼斗は私が他の誰かと付き合ってもいいの?」
「なんじゃそりゃ?うーん...よく分からんけど、これだけは言えるな」
「な、なに?」
「もし雪菜が誰かと付き合って、幸せじゃなかったら俺は相手のやつを一生許さん」
「へ、へぇー。そ、それってどういう意味?」
「雪菜は俺の大事な人だからな。幸せになって欲しいのは当たり前だろ?お前可愛いし、変な男に騙されんなよ?」
「だ、大事な人!それほんと?可愛いっていうのもほんと?」
「本人を目の前に嘘なんか言わねーよ!ほんとに決まってんだろ?」
「...やっぱり、好きだなあ」
「おい、なんで抱きつくんだよ!」
「ちょっとだけ、こうさせて」
大事な人、可愛い。その2つのワードが私の頭の中をグルグルする。やばい、嬉しすぎる。きっと今の私の顔はだらしないんだろうな。そんな事を忘れてしまうくらい嬉しかった。好き好き好き好き好き、大好き。どんどん好きになる。
私が抱きついても、やめろ!とか言うくせに、無理やり剥がそうとしないし、なんなら頭撫でてくれるし。ほんとに好き。大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き。私に触れていいのは隼斗だけ。他の男とか眼中にない。別にモテなくていいし、隼斗が傍にいてくれれば。
「...ってことがあってさぁ、もうどんだけ好きにさせれば気が済むのって言うのなんの!」
「はぁ、あんたその話何回目よ?聞かされる私の身にもなってよね...」
「で、でもぉ!隼斗がカッコよすぎるのが悪いと思うの!」
「確かに森山君ってカッコイイけどね。背高くて顔もめちゃくちゃかっこよくて、勉強出来てバスケめっちゃ上手くて。あれで優しいとくれば、そりゃあモテるわな」
「やっぱり香織もそう思う?はぁ、そうなんだよね、めっちゃモテてるんだよねえ...」
「いやいや、あんたもたいがいよ。この間だってサッカー部の先輩から告られてたじゃん」
「私は隼斗しか眼中にないから。他の男とかどうでもいいし」
「まあ、あんだけのイケメン君が幼馴染だもんねえ。はー、ほんとに羨ましい」
「でもあの鈍感男、全く気づかないのよね。ほんとに、欠点はそこだけなのに...まあ、そこも好きなんだけど♡」
「はいはい、お惚気はその辺にして。あんたの幼馴染君のお迎えが来ましたよ」
「あ、隼斗だ!ごめん香織、私行くね!」
「はいよー、また明日ねー」
香織は私と小学校の頃からの親友で、よく話を聞いてくれるから大好き。香織とは部活が違うため放課後はこうして別れるのだ。隼斗と香織とはクラスがずっと一緒で、なんだか運命的なものを感じる。
私は確かにモテるが、香織だってかなりモテる方だと思う。本人は否定しているが、中学の時は私と香織で男子の人気を2分化していたと聞いたことがあるくらい。でも、私と同じで告られても縦に頷いたことは無い。
閑話休題。私たち3人は高校でも同じクラス、隼斗とは隣の席になることができて非常に嬉しかったのだが、隼斗の右隣の子、柊紗奈さんはどうやら隼斗のファンらしく、しかも男バスのマネージャー志望のようだ。どうせ隼斗目的に決まってる。そんなのダメ。隼斗の隣は私のもの。絶対譲らないんだから。
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