2話 切っても切れない

俺がこれから通う清蘭高校は、県内では1、2番を争うくらい偏差値の高い高校だ。そして、校舎がめちゃくちゃ広くて綺麗。清蘭はまだ創設15年と新しく、最新式の設備が整っている。



これだけではない。清蘭高校バスケ部は、男女共に強豪として知られており、全国大会初出場から5年連続で出場しており、去年男子はウィンターカップベスト8までいった。女子に至ってはベスト4と、県内では敵無し。



姉さんに勧められたのもあるが、去年俺が全中で決勝まで行き、複数の高校からスカウトが来ていたのだが、その内の高校の1つが清蘭だった。それもあり、入学を決めたのだ。



「うわ、やっぱりめっちゃ綺麗だな。それにでかいし」



「隼斗、はやくクラス見に行こ!もう皆見てるみたいだし!」



「はいはい。てか雪菜、学校着いたんだからいい加減手を離せ!」



「絶対に嫌!今牽制してるとこなんだから、邪魔しないで!」



おいおい、高校に着いてまで恋人繋ぎとかやばいだろ。ほら、皆付き合ってるって勘違いしてるよ。証拠に、



「彼氏持ちかよ、可愛いと思ったのに」


「でもその彼氏がめっちゃイケメンだから競う気にもなれんな」


「「「はぁー」」」



ほらな。やっぱりこうなると思った。



閑話休題。早速クラスを見に行く。喜んでいる者や落ち込んでいる者と様々いて面白い。



「俺のクラスは....B組ね」


この時点で嫌な予感がしたが、どうやらその予感は当たっていたようだ。



「やったね、私もBだ!また隼斗と同じになれて嬉しい♡」



「えーい、抱きつくな!」



ったく、油断も隙もありゃしねぇんだからこいつは。どうか隣の席ではありませんように。神様、どうかお願いします。



「やったー!席も隣だ!これから休み時間とか昼休みずっと一緒に居られるね♡」



どうやら神様は居ないみたいだ。俺が望むのは平穏な日々を送ることなのに。ただでさえ目立つ雪菜と一緒にいることで目立つことは避けられない。切っても切れない関係とは俺たちのためにある言葉だろう。



俺の席は窓際から2列目の1番後ろ。左隣が雪菜。通路はさんだ隣の人はまだ来てないみたいだ。



「はぁ、はやく仮入部期間にならねーかな。バスケしたくてウズウズするわ!雪菜は部活どうするか決めたのか?」



「あんたはほんとにバスケ好きよね。私はもう決めてるわ。もちろん、男バスのマネージャー一択よ!」



「はあ、雪菜はマジで物好きだよな。好き好んで男バスのマネージャーやるやつなんていねぇよ普通」



「物好きって、なんでもいいみたいな言い方やめてよね!そこに隼斗が居たら、私もいるの!てかあんたがいなかったら好き好んでマネージャーなんかやらないわよ、鈍感男」



「はあ、まあいいけどさ。そんな事より、俺は高校生になったからには、あの目標を達成してやる、必ずな」



「あの目標?なんのこと?」


「それは....彼女を作ることだ!」


「.....は?」


「え、なんでキレてんの?」


「ダメよそんなの。そんなの私が許さないから。隼斗は私がいれば充分でしょ?私のどこがダメ?言って、直すから」


「ダメなとこ?うーん、すぐにひっついて来るところは直してほしいな」


「それは無理ね。隼斗にくっついちゃ駄目とか、私を殺す気?私たち、もう実質付き合ってるみたいなもんじゃない。周りにも、そう思われてるみたいよ?」



どうやら、これは雪菜の計算だったらしい。くそぉ、俺の華の高校生活がぁ。



会話をしていたら、右から人影が。隣の人が来たらしい。挨拶しようと振り返ると、そこにはとんでもない美人がいた。



「もしかして、森山隼斗君ですか?」


「え?俺の事知ってるんですか?」


「はい、もちろんです!たまたま同じ高校でたまたま同じクラスで、ましてやたまたま隣の席で!すっごい偶然!なんか、運命みたい、ですね」


「そ、そうですね、あはは...それより、どうして俺の事知ってるんです?」


「実は私、森山君の全中の試合を見たことがあるんです。元々バスケが好きで、親がバスケのコーチをしていることもあって全中の試合に行ったんですけど、そこでたまたま森山君のとこが試合やってて。初めてだったんです、人のプレーを見て見惚れてしまったのも、心を奪われたのも」


「そ、そうなのか...まあでも、決勝では勝てなかったんだけどな」


「そんなの関係ありません!森山君、いえ、隼斗君のプレーは凄かったです!それに関しては私が保証します」


「そか、ありがとう。君みたいな美人に言われると余計嬉しいよ」


「び、美人ってそんな...あぅ...」



そう言って顔を真っ赤にしてしまった。なんか可愛いな。こんな美人だったら言われ慣れてるだろうに、初心みたいな反応だな。


「あ、てか君の名前は?」


「..は!すみません、私の名前は柊紗奈(ひいらぎさな)といいます!これからよろしくね、隼斗君」


「ん、柊さんよろしくね」


「駄目ですよ隼斗君、呼び方が他人行儀です」


「え?じゃあ紗奈さんでいいか?」


「わざとやってるんですか?むぅ、呼び捨てで構わないということです!」


「あ、ああそう、じゃあ紗奈」


「あうぅ....よ、よろしく、ですぅ...」


うわ、やっぱり反応めっかわやん。あ、めっちゃ可愛いってことね。なんかからかいがいのある人だな。これから毎日からかってやろっと。


「ちょっと!私をほったらかしにしないでよ!すーぐナンパするんだから!」


そう言って俺の右腕に抱きついてくる。一体今日はなんでこんなに抱きつかれるんだ?


「あら?隼斗君、そちらの方は?」


「ああ、こいつは佐伯雪菜。俺の幼馴染なんだよ」


「あんた、確か柊さんって言ったわね?隼斗には手を出さないでよね。」


「あら、佐伯さん?別に隼斗君と話そうが私の勝手だと思いますけど?」


「馴れ馴れしく隼斗って呼ばないでくれる?彼女である私以外が呼んではダメなの」


「あら?隼斗君は幼馴染と言ってましたよ?あなたの思い違いでは?」



あれ?なんか仲悪い?この子達。すっごい睨み合ってんだが。女子ってこわぁ。



「まあまあ2人共落ち着いて。」


「隼斗は黙ってて!」


「隼斗君は黙ってて!」



はあ、俺の平穏な日々を過ごす事と彼女を作って色んなことしたいって目標、はやくも崩れ去っていく。はあ。

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