高校1年生編

1話 始まり

桜が満開に咲きほこる4月。今日は主人公、森山隼斗がこれから通う清蘭高校の入学式。しかし、入学を迎える当の本人は、まだぐっすりと寝ている。そこへ近づく者が1人。



「お兄ちゃーーーーん!起ーきーてー!」



「ぐはっ!朝から元気すぎんだろ....てかどさくさに紛れて抱きつくな暑苦しい!」



「起きないお兄ちゃんが悪いんだよ?はい、おはようのチュー♡」



「しない!...ったく、今日から高校生だってのに目覚めが悪いな」



妹の由希は朝の決まった時間に毎回俺を起こしに来るのだが、スキンシップがいつも激しい。今日なんてまだ軽い方だ。いつもなんか、濃厚なキスを無理やりしてきて起こしてくることもあれば、俺の息子をズボン越しににぎにぎしてくるし。まあ、これ以上やったら嫌いになるから、と一言言っただけでキッパリやめてくれたので良かったが。



この変態な部分は外では出さない。何せ由希はめちゃくちゃ顔が整っていて、スタイルもいい。読モをやってるくらいだし外面はいい。だから露呈こそされていないが、激しすぎるのはどうかと思う。



そんな妹に起こされた俺。洗面所に行き顔を洗い、着替えをすませる。その後はグリースを使い髪の毛をセットする。今まではこんな事はしていなかったのだが、人気モデルである姉にやるべきだ!と熱弁され、やる事になった。



セットが終わると、後ろから柔らかな感触がする。このデカさ、あの人しかいない。



「姉さん、毎回後ろから抱きつくのはやめてくれ!てかブラしろよ!」



「え〜、いいじゃんいいじゃん♡ノーブラも悪くないでしょ?ほら、隼斗のアソコも興奮しちゃってるよ?」



まあ、正直悪くない...じゃなくて!本当にこの人は、はぁ。なぜうちの姉と妹はこんなに変態なのだろうか。



俺の姉、森山友奈は俺の1個上の高2。俺がこれから通う清蘭高校に通っている。なぜ同じ学校かと言うと、姉曰く「隼斗は清蘭高校に通うのよ!もし他のところにするなら私もそこに転校するから♡」だそうだ。半ば無理やりと言っても過言では無い。まあ別に嫌って訳では無いのだが。



そんな姉だが、人気モデルとして雑誌の表紙を飾ったり、たまにテレビで特集を組まれたりしている。なので、清蘭では姉のファンクラブが存在するらしく、人気は凄まじいらしい。だからこそ、平穏な学校生活を送りたい俺は、姉に「俺と姉弟だということは言うなよ!絶対だぞ!」と何度も釘をさした。まあ、義理のだが。



話を戻す。そんな姉を引き剥がし、朝食を済ませた俺は、学校に行く準備をして玄関へと向かう。



「そろそろ行ってくるわ。姉さん、由希、仕事頑張って」



「お兄ちゃん!雌豚共から言い寄られても、くれぐれも近づかないように!あと、連絡先は容易に交換しちゃダメだから!」



「そうそう、隼斗はすーぐ女の子を囲っちゃうんだから。気をつけること!」



「はいはいわかったよ、行ってくる」



玄関のドアをガチャっと開け歩き出す。雲ひとつ無い青空。日差しが暖かくてちょうどいい。おっと、はやく待ち合わせ場所行かんと。



「悪い!どんくらい待った?」



「あ、隼斗おっはー。私もさっき来たばっかだし大丈夫だよー!」



幼馴染である雪菜がそう言って笑う。雪菜とは幼稚園からの仲で、小中とずっと同じクラスでずっと隣の席。これは仕組まれているのでは?と思っている次第である。俺が清蘭に行くと言うと、「じゃあ私も清蘭いく!」と言ってついてきやがった。まあ知り合いがいてくれるのはありがたいので構わないが。



雪菜は中学校に入ったくらいからモテ始め、学校のマドンナと呼ばれるくらいには外見が整っている。長く伸ばした艶のあるサラサラの黒髪にパッチリとした目、綺麗な白い肌に、大きい胸。制服は着崩してすべすべの足を大胆に見せている。



そんな彼女は、常に俺の近くに居たがる。「そういう仲だって勘違いされるぞ?いいのか?」と聞いたことがあるのだが、「隼斗だから大丈夫なの!むしろ、牽制の意味もあるし!」と、自信満々に返されてしまった。牽制って、何に対してだ?未だに意味がわからない。



そんな事を考えていると、腕にムニュッとした感触を感じる。見ると、雪菜が俺の腕に胸を押し付けていた。



「おい、なんでそんなにくっつくんだよ!胸が当たってんだよさっきから」



「当ててるの♡どう?私のGカップのおっぱいは?気持ちいい?気持ちいいよね?」



「カップ数まで言わんでええわ!まあ気持ちいいけど」



「はっきり言ったよこの人...まあ、そういうとこも良いんだけどね」



「なんか言ったか?てか、はやく腕組むのやめろ!」



「なんでもない!じゃあ、手繋ぐで許して♡」



そう言って手を繋いでくる。それも指を絡める恋人繋ぎ。この状態の雪菜には何を言っても無駄なので諦めた。



「ふんふんふーん♫」



「やっぱお前凄いな、さっきから男の視線がすごいぞ.....学校まで耐えられっかなぁ」



「他の男に興味無いし。それより隼斗、あんたも女の視線集めてるの気がついてないの?ああ、そういえばあんたはクッソ鈍感野郎だったわね。まあそれでいいんだけど」



「誰が鈍感野郎じゃ!てか、俺の事なんて誰も見てねーよ、こんな陰キャのこと」



「...はぁー。はいはい陰キャね、そんな事言ったら全国の男から消されるわよ」



なんか意味のわからないことを言っているが、まあいいだろう。俺なんて勉強とスポーツができるだけの陰キャなんだから。

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