第12話決戦は金曜日!

山崎は今日は朝からご機嫌だった。千紗があんなにウルトラセブンが大好きだとは。

もしかしたら、お付き合い出来るかもしれない。

だが、キスの仕方が分からない。どうしよう。恋人同士なら必ずキスは付き物。

山崎の頭の中は『キス』の2文字しかない。

たまに、『キスの天ぷら』を注文してから、キスをすれば良いのか?と、考え出した。

昼休み、トイレに行くと藤岡係長がいた。

「おっ、山崎。この頃、千紗ちゃんとはどうだ?」

山崎は、手洗いで手を洗いながら、

「それが、藤岡さん。キスの仕方が分からなくて」

藤岡は顔を向け、

「な、何ッ!もう、そんな仲なのか?」

「はい」


藤岡は山崎にキスの仕方を伝授した。

「いいか、まず、右手で彼女の左腰を抱き寄せ、さりげなく顔を近付けて、キスをするんだ、やってみな?」

山崎は、藤岡の左腰に手を回し、キスの格好をする。

「違う違う、まだまだ固いな~。さりげなくだ。もう、一回」

「は、はいっ」

山崎はさっと、左腰に手を回し、顔を近付けキスの格好をした。

すると、悲鳴が聴こえた。


「ヒッヒィィ~、藤岡君と山崎君、会社で何をしてんだ!あっ、もしかして君らは……」

藤岡は慌てて、

「田山課長、これは違うんです。キスの練習なんです」

と、言い訳したが、

「キスの練習だと~。こんな昼間から。藤岡君。君には家族がある。この事は私の胸の中にしまっておくよ。次からは、会社でキスしないように」

2人はトイレを離れた。

「藤岡さん、すいません。僕のせいで」

「気にすんな、山崎。今夜はいよいよだな」

「そうですね」

「今日は、残業しなくていいから。残った仕事はオレが済ませておく」

「何から何まで、すいません」

「今度、黒ビールの旨い店があるんだ。一杯、ご馳走してくれ」

「もちろんですとも」

山崎は、17時になると藤岡に引き継ぎして、タクシーで割烹居酒屋早水に向かった。

千紗は、いつもより早めに仕事を切り上げ、早水へ向かっていた。

何か、不安しかしないこの2人のデートの行方が気になるところだ。

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