第10話月曜日に反省

藤岡は会社で課長、係長、そして後輩の誰よりも早く、出社する。

今日の仕事の準備と船の入港状態を調べなければならない。

係長の柴田は、うつ病になり入院している。係長の仕事も藤岡が代わりに引き受けていた。

話しによると、柴田の仕事復帰は難しく再来月から係長に昇進が決まっていた。

役職に就いても、現場にはたまに出る事を田山課長に伝えている。

藤岡は左手首の、安物のG-SHOCKを見ると07:20。始業の約1時間前だ。自分の仕事は2時間で済ませ、係長の仕事に時間をかけるのだ。

「おはようございます」

「おはよう。早いね石神ちゃんは」

「主任が一番早いじゃないですか」

「アハハ、そうだね」

「主任、はいどうぞ」

と、石神美樹は藤岡に缶コーヒーを渡した。

「ありがとう」

「いえいえ」

そして、田山課長、中川が出社してきた。

まだ、アイツが来ていない。

金曜日、めちゃくちゃ酒乱で迷惑をかけられたあの男が。


「おはようございます」

「あ、先輩おはようございます」

と、中川が言った。

山崎が出社してきた。そのまま、藤岡のデスクに近寄り、

「藤岡主任、おはようございます。金曜日はありがとうございました。新しい出会いがあり楽しかったです。でも、藤岡主任、飲み過ぎは注意して下さいね」

藤岡は恐る恐る、

「山崎、金曜日の事を覚えているのか?」

と、尋ねると

「千紗ちゃんと、LINE交換したことだけは覚えているんですが、前後を覚えていません」

「お前は、酒乱で暴言吐いたんだよ」

「ま、そんな夜もあるんじゃないですか?今夜は千紗ちゃんと映画鑑賞です。主任、本当に感謝します」

「……ま、頑張りなさい。もう、僕らの出番は無いから、後は2人で」

藤岡は、コイツの精神力は大したもんだと思ったり、バカだな!と思ったり複雑だった。


キーンコーンカーンコーン


始業開始のチャイムだ。

「ちょっと、藤岡君いいかな?」

と、田山課長が声を掛けてきた。

「はい。何でしょう?田山さん」

「山崎君を連れて、応接室に来なさい」

藤岡は、仕事中の山崎に声をかけ2人で応接室に向かった。

「実は2人に話しがある。柴田君の事だが、彼が今月一杯で退職する。それに伴い藤岡君は係長に、山崎君は主任に昇格だ。仕事は大変だが、それなりの給料になる。異義はないかな?」

藤岡は当たり前だという思いでいたが山崎は、

「僕に、主任が勤まるでしょうか?」

「なぁ~に、新係長が丁寧に引き継いでくれるさ、な?藤岡君」

「はい。仰せの通り」

「じゃ、頑張ります」

「辞令は来月一日だ。宜しく」


2人は応接室を出ると、喫煙所へ向かった。山崎は、メビウスを吸っていた。藤岡はハイライトだ。

「山崎主任、やったな。地位も女も手に入り」

フーッと煙を吐きながら言った。山崎は心外だと言わんばかりに、

「やめて下さいよ、藤岡さん。否、藤岡係長」

山崎は給料アップしか興味ないと藤岡に話していた。

藤岡もうんうん、と頷いた。

「今夜は千紗ちゃんと楽しみなさい」

「はい。ありがとうございます」

「ビールは2杯までだぞ!」

「もう、飲みません」

2人は仕事に戻った。


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