第9話初対面の印象

藤岡、三浦、山崎は指定の時間に15分遅れて、居酒屋千代に到着した。

山崎はリバースのお陰で、酔いが少し覚めた様子だった。

「山崎、今度は飲みすぎるなよ!」

と、藤岡が諫めると、

「はい。生中を2杯くらいで後は烏龍茶飲みます」

と、山崎は力なく言葉にした。


ガラガラガラ


「あらっ、藤岡ちゃん、三浦ちゃんいらっしゃい。お連れ様は奥座敷の個室へ乗っているでお待ちです。やだっ、イケメン連れて。うちの凛には指1本触れさせないからね。アハハハ」

千代は高らかに笑った。

「ババア、今夜はやけに機嫌がいいな?」

そこに、凛ちゃんが現れ、

「おばあちゃん、お客さんに飲ませれて上機嫌なの。捻挫の痛みも消えたみたいで」

と、居酒屋千代の看板娘が言い訳をした。

3人は個室に向かった。

三浦が扉を開くと、

「すいません。仕事が長引いて……」

と、苦し紛れのウソをついた。


「こんばんは。三浦さん。今日は塾長の広坂さんもいらっしゃいます」

と、千紗が言うと、

「お疲れ様です。ラージスロープを開いている広坂で、、、あっ、三浦君!」

広坂はまるで友達の様に三浦の名前を呼んだ。

「あっ、ヒロちゃん。藤岡、ヒロちゃんだよ!懐かしいなぁ」

三浦は藤岡を呼んだ。

「あっ、藤岡君まで!」

千紗とひとみは塾長と三浦、藤岡の関係を知らないので、何がなんだか分からない様子だだった。

「千紗ちゃん、ひとみちゃん。実は僕はラージスロープ学習塾を立ち上げる前、名古屋トランスコーポレーションに勤めていたんだ。業務部業務課の。だから、藤岡君と同じ部署の同期なんだ。15年くらい前だな」

広坂が一番喜んでいる。

「藤岡君、今日はうちの右腕の千紗ちゃんに会わせたい男性がいるんだって?」

「あぁ、今日の主役を連れてきた。山崎、こっちこっち」

山崎は控え目に、

「山崎純也と申します」

と、言って座敷に座った。

千紗の目が輝いている。

「ほう、かなりイケメンだな。あれか?三浦君、君らは酒の匂いがするが、まだ、仕事中酒を飲んでるのか?」

広坂は酒臭い3人を見渡した。

「ヒロちゃん、タクシーの中で缶ビールを飲んだだけだよ。あの頃と違うんだ」

「それなら、良いけど」

「千紗ちゃん、山崎君だ。第一印象はどうかな?」

「カッコよくて、優しい目をしている男性に見えます」

「それは良かった、な?山崎君」

山崎はうつ向いていた。

6人は、生中で乾杯した。


藤岡と三浦は内心、ドキドキしていた。山崎が問題を起こさない事だけを祈ったのは、2人の共通点であった。

山崎が生中をゴクゴク飲んでいる。


「ゴクッゴクッゴクッ、帰れバカヤロー」


山崎は、広坂率いる女性陣にそう叫んだのだ。

「生中お代わりっ!」

やってしまった。この、見合いは失敗だ。

しかし、千紗は動揺もせず、

「山崎さんは、酒乱なんですね。私の父も酒乱です。だから、別になんともありませんよ、藤岡さん、三浦さん」

千紗はハイボールをついでに注文した。

これが、2人の出会いであった。

山崎は酔いながらも、千紗とLINEの交換をしていた。

酔った山崎は、恐竜戦車について熱く語った。もちろん、ウルトラセブンの話だが。

藤岡と三浦の役目は終わった。後は、2人の恋が芽生えるかどうか。

少なくとも、千紗は山崎に好意を寄せている。

どうなることやら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る