第7話今夜は楽しみ

ラージスロープ学習塾内。

「広坂塾長、わたしと、ひとみちゃんは採点終わりました。そろそろ帰ります」

小林千紗は広坂に言った。

「お、ご苦労様。今夜は、いつもの頑張りのお礼に一杯奢りたい。時間あるか?」

「ありますけど、人と会う予定が」

千紗は申し訳なさそうに言う。

「じゃ、僕が奢ってあげよう」

「仕事は大丈夫ですか?」

と、千紗は困惑気味に言ったが、

「今夜は副塾長に任せている」

「そうですか。……実は居酒屋で知り合ったサラリーマンの方との飲み会なんです」

「どこの会社?」

「名古屋トランスコーポレーションです」

「……いい会社じゃないか。僕も参加する。何時からだい?」

「17時からです」

広坂は腕時計を見た。腕時計は16:45を表示していた。

「時間だ。ひとみちゃん、準備は出来たか?」

「はい」

「2人とも、僕に付いて来なさい」

と、言うと広坂は千紗とひとみを車に乗せて、居酒屋千代に向かった。

帰りは、代行を利用するらしい。

17:00ジャスト、店にも、外にも、名古屋トランスコーポレーションの連中はいない。

「千紗ちゃん、約束の日間違ってない?」

「いいえ、今夜です」

「先に飲んでいようか?」

「そうしましょう」


広坂と千紗、ひとみは千代に入った。

「オッス、ババア。まだ、生きてんのか?」

と、威勢よく千代婆さんに広坂は声をかけた。

「あら、塾長、それに千紗ちゃん、ひとみちゃん、いらっしゃい」

千代は思いっきりの愛想を振り撒いた。

バイトの折田少年が、おしぼり、付きだしの枝豆を運んできた。

広坂はおしぼりで、手を拭き、顔を拭き、首回りを拭いた。

千紗とひとみは、うわぁ~と声を上げちょっと広坂との距離を離した。

3人は生ビールを注文し、鯉の洗いを選んだ。

3人で乾杯して、

「で、名古屋トランスとどういう飲み会の予定なの?」

と、広坂がひとみに尋ねると、

「今夜は、千紗さんの彼氏候補と初対面の日なんです」

「居酒屋お見合いかぁ~、ヨシ、今夜は僕がその男を吟味しよう。しかし、時間にルーズだな?お相手さんは」


ピコーン


「あ、藤岡さんからだ。15分おくれる。らしいです」

千紗が云うと、

「今夜は、とことん飲んで、男に払わしちまえ!」

「そうします」

「凛ちゃん、つまみ。軟骨の唐揚げと、揚げ出し豆腐。それと、ノドクロの干物」

凛は、今夜の事を知っている。

「広坂さん、あまり飲み過ぎないでね!」

「うるせえ、四国人をバカにすんな」

「おぉ、クワバラクワバラ」

凛はおばあちゃんの口癖をモノマネした。


一方、男性陣は苦悩していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る