第4話ファーストインパクト

「ねぇ、ひとみちゃん。隣のオッサンに声掛けてみようか?」

千紗は怪しい目付きで話した。大抵、悪巧みである。

「千紗さん、相手はオッサンだよ。いっちょ前に結婚指輪はめてるし」

「上手くいったら、飲み代奢って貰えるかも」

この、2人は何やら、打ち合わせを始めた。


「なあ~、藤岡。隣の姉ちゃん達可愛くねぇか?」

三浦はハイボールを飲みながら、藤岡に言ってみると、藤岡はまんざらでもない。

「三浦~、オレ最近EDなんだ。体力もねぇし」

「ば、馬鹿モノ!ただ、喋るだけだ」

「若いヤツらと、話し方わかんねぇよ」

「お前の課には、中川君や美樹ちゃんがいるだろう?」

「いるけど、何が言いたい」

「藤岡は、万人受けするタイプなんだよ」

「じゃ、声掛けてみようか?」

「うん、そうしよう」


「あの~」

「あの~」

藤岡の声と千紗の声がぶつかった。

「どうぞ、そちらから」

と、藤岡が言ったが千紗は、

「いえいえ、そちらから」

「じ、じゃあ、明日は晴れのち曇りみたいですよ!」

「ば、バカ、藤岡、天気の話ししてんじゃねぇよ!向こうも困ってるじゃねえか!オレのお手本を見てろ」

「う、うん」

「そこの、若い者たちよ、良くこの店にくるのかい?」

「……わたしは初めてですが、隣のひとみちゃんは何度か」

「ほう、名は何と申す?」

「……わたしは千紗です」

「では、千紗とらや、酌をせい」

「……ちょっと待ってくださいね」


「ほら、見ただろ?藤岡。これで、ファーストインパクトは俺たちは三ツ星だ」

「すげぇな、三浦」

2人はハイボールを凛ちゃんにお代わりを頼んだ。凛ちゃんは、クスクス笑いながら、注文を聞いた。


「ねぇ、ひとみちゃん。あの2人、バカよ!」

「だから、言ったのに」

「シャクヲセイ!って、何?」

「おちょこに酒を注ぐ事ですよ!」

「あの、2人、ハイボールじゃない。もう、一回当たってみる」

「やめなって!」


「あのぅ、お二人は何のお仕事なんですか?」

「貿易会社だよ。名古屋トランスコーポレーション」

「え!名古屋トランスコーポレーションですか?」

「オレは、総務課の主任の三浦。隣は業務課の主任の藤岡君。同期なんだ」

「名古屋トランスコーポレーションって、スゴい会社ですね。私たちは、ラージスロープ学習塾の講師していますが、英語講師は名古屋トランスコーポレーションの入社試験落ちました」


三浦は振り返り、

「藤岡、この会社の入社試験そんなに難しかった?」

「英語が出来ないヤツに難しいだろうな。俺たち、TOEIC850点以上はあるし」

「そうか、これで主導権は握った。河岸変えるぞ」


「ひとみちゃん。なんで、あのオッサン達が名古屋トランスコーポレーション勤務なのよ!」

「たぶん、いい男を紹介されるかも」

「そうだね」


「ねえ、君たちお店変えようか?」

「はいっ」

「支払いは各々で」

「……ケチッ」

「何か言った?」

「い、いいえ」

三浦は、4人で、バーのオールドクロックに向かった。

まだ、9月は暑い。


4人は、バーで各々の酒を飲み女性陣の悩みを聴いた。

「なる程、君たちは名古屋トランスコーポレーションの若い男を紹介してもらいたんだな?」

藤岡がバーボンのロックを飲みながら返事を待った。

少し間を置いて、千紗は、

「はい」

と、答えた。





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