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魔物狩りのメンバーの中に、一人魔力を操作できる子供がいた。それを見つけたのは偶然の出来事だった。
「あっ」
と誰がいったか、うっかり魔物から剥いだ魔石を、落として割ってしまった。ああー、っとみんなが割れた魔石を見つめて項垂れているのに、その子だけ無散していく魔力を、目で追い続けていた。
「……ナタリー。何が見えた?」
「え?」
名前を呼ばれた少女は、目をパチパチさせ見たものを報告する。
「なにかこう綺麗な色をしたものが、ふわーって」
「……空気に溶け込んだ魔力が見えるのか?」
話を聞いていると、ナタリーはたまに空を見上げてボーっとしていることがあるらしい。何を見ているか聞くと普段からその、ふわーっとしたものを目で追いかけている。ただ、周りの人間には何も見えないため、放置されていたらしい。
「……ナタリー。魔力操作を覚えてみるかい?」
俺一人の、固有スキルではなかったことは少し残念だが、俺の技術を教えられる後継者が現れたことは、良いことだろう。折角なので、あんまり役には立たないが魔力操作を教えることにした。
ちなみに俺は、無散した魔力は感じることはできるが、見ることはできない。その時点で、この子は俺より才能があるのかもしれない。
魔力操作の授業は難航した。
何故なら俺が感覚で覚えたため、言葉で説明することができなかったからだ。『こう、ふわっと包む感じで……』『包めたらこう、混ぜるような感じで性質を変えて……』感覚的なアドバイスのみで、魔力操作を覚えてもらう必要があった。
結局、彼女が魔力操作を覚えるまで半年かかった。
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