第16話
「ほら、防具の注文は終えたから次行くわよムゲン!」
ムゲンの首根っこを掴むと、そのままコンテナから出たアイシアは銃器と書かれたコーナーまで移動する。
そこにはハンドガンからスナイパーライフル、アサルトライフル、ショットガン、ロケットランチャー、グレネードまで置いてあった。
「すごい数だ……」
「何言ってんのよ、この中から自分に必要な武器だけを選んで使いこなす、それがコントラクターでしょ」
アイシアはそう言うと、ムゲンが腰に携帯しているヘビーピストルを勝手に抜く。そしてヘビーピストルを分解し始めた。
「ちょっ! 何を……ッ!?」
「いいから黙ってなさい。こんなにボロボロのヘビーピストルでよく生きていたわね。メンテナンスしていたの?」
「撃てなくなったら買い替えてました……」
ムゲンの返事にアイシアは溜息をつくとムゲンの頭に軽くチョップを入れる。
そして素早くムゲンのヘビーピストルを元の状態に組み立て直していく。
「はぁ……銃のメンテナンス方法も教えないといけないわね。カグヤ、ムゲンに合うゴツくてデカい銃ある?」
「もちろんあるよ」
アイシアの要望に答えるとカグヤは、並べられた銃器からアイシアの要望にあった銃を探し始める。
そしてしばらくするとカグヤが戻ってくると、その手には大型のオートマチック式の拳銃が握られていた。
「少年の筋肉の良さから鑑みるとこれが良いんじゃないかな。反動も受け流せれば威力はお墨付きさ」
カグヤはそのオートマチックピストルをムゲンに手渡すと、そのヘビーピストルの重量感にムゲンは驚きながらも何とか両手で握りしめる。
手に持ったヘビーピストルの重さは、以前まで使用していたヘビーピストルとは比べ物にならないほど重く、腕にかかる負担にムゲンは思わず顔をしかめてしまう。
「カグヤ、撃ってもいいかしら?」
「もちろん、射撃場もあるよ」
カグヤは隣にある扉を開けると、その先に広がるのは広い空間であった。そこは巨大なドーム状の部屋で、壁際には様々な的が設置されている。
ムゲンはヘビーピストルを片手に、射撃場の中に入っていく。
ゆっくりと両手でヘビーピストルを構えるムゲン、狙いは約十メートル離れた的。ゆっくりと呼吸を整えると、構えたヘビーピストルの引き金を引く。
銃声と共に撃ち出された弾丸は、まっすぐ的に飛翔していき命中する。
「すごいな……」
以前まで使用していたヘビーピストルとの違いに、ムゲンは驚きを隠せないでいた。そんなムゲンを見てアイシアが得意げな表情で近づいてくる。
「どう? ちゃんとしたヘビーピストルはサイドアームとして優秀だし、屋内戦でも取り回しが良いし持っておいて損は無いわよ」
弾倉に入った銃弾を抜いたムゲンは、手に持ったヘビーピストルをまじまじと見つめていた。
「ムゲン、悪いけど次はこれよ」
そう言ってアイシアが持ってきたのは黒塗りのサブマシンガンとアサルトライフルであった。
「どうしたんです、これ?」
これまで仕事ではヘビーピストルしか使ったことが無かったムゲンにとって、サブマシンガンとアサルトライフルは敵対的な勢力しか使っているのを見たことがない。つまり使用したことが無い武器なのだ。
「何よ、鳩が豆鉄砲くらったような顔しちゃって。もしかして使ったことないの?」
アイシアの質問にムゲンはコクリと無言で頷く。それを見たアイシアは思わず呆れたように天を仰いでしまう。アイシアの隣に立っていたカグヤも、困り気味の表情を浮かべていた。
「はぁ……とりあえず撃ってみなさい。そしたらアサルトライフルの使い勝手もわかると思うし」
仕方なくアイシアはムゲンにアサルトライフルを持たせるが、アサルトライフルを持ったことのないムゲンの構えはとても不格好なものであった。
アイシアはそんなムゲンの構え方を矯正しつつ射撃姿勢の指導を行う。そしてそのままムゲンを射撃スペースに移動させた。
「とりあえず一マガジン分三十発撃ってみなさい、それだけで使い心地がわかるはず」
そう言うとアイシアは後に下がっていく。それを見届けたムゲンはアサルトライフルを構えると、ターゲットに向けてトリガーを引くのだった。
タタッタとリズム良く響く銃声、そして放たれた弾丸は次々にターゲットに命中していく。しかしターゲットに命中した弾丸は、その半数がムゲンの意図しない場所に命中していた。
「うーん、思ったより当たっていない……」
「いいじゃない、初めてならこれぐらい上出来よ」
アサルトライフルに視線を落としながら呟くムゲンに、アイシアは苦笑いを浮かべる。アイシアの言う通り初めて撃つのであれば、ムゲンの射撃は合格点を出せるものであった。
「それじゃあムゲン、次はサブマシンガンね」
笑顔を浮かべながらアイシアは黒のサブマシンガンを差し出す。
ムゲンはサブマシンガンを受け取ると、しっかりとターゲットを見据え、連続で二回引き金を引込む。
すると乾いた音を立てて発射された弾丸は、吸い込まれるかのようにターゲットに向かって飛んでいき、着弾音が射撃場に響き渡る。
「サブマシンガンのほうが、衝撃が軽くて撃ちやすいですね」
「使っている弾が違うから当たり前でしょ」
そのままアイシアはヘビーピストルとアサルトライフルを手に持ち、射撃場を後にする。その後をムゲンとカグヤが付いていくのであった。
「いやぁ少年の射撃の腕も見られたし、アイシアご注文は?」
「ヘビーピストルとサブマシンガン、それにアサルトライフルを二丁ずつ。改造は全部にスマートガン・システムを付けて欲しい。後、銃弾を各三百発ずつ」
「分かった、すぐに準備させるよ。改造も時間はかからないしね」
そう言ってカグヤはアイシアの注文を手元の端末に入力していく。その手の動きは慣れたもので、一切淀むことなくスムーズに操作していく。
「あの……アイシア、俺もお金出したほうが……」
「遠慮しない、どうせシェイドから予算を貰ってるんだから使い切るぐらいの気持ちで行きなさい」
有無言わせぬアイシアの言葉に、ムゲンは渋々ながらも頷く。その間にもカグヤは注文を入力し終え、明細をアイシアに手渡すのだった。
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