陸第46話 ロートレア陸衛隊訓練所
昨日は一日中、カバロ達と牧場で遊んでしまった……
いや、セレステには久し振りに行った。
マクトリィムスさんに会ったら『魔導船の徽章』をたくさん作ってて、ちょっと笑ってしまった。
だけど
魔導船の徽章はいくつか買わせてもらったんで、ルエルスとかアフェルとかにあげよう。
そんなことを考えながら、ロートレアの陸衛隊訓練所を訪ねる。
建物に入ると、いつもは訓練希望者が数人はいるのに、今日はまだ誰もいなかった。
すると、俺の姿をみつけたルシクラージュさんが、小走りで寄ってくる。
「おおっ、ちゃんと覚えていたか、ガイエス!」
「……忘れないって」
ちゃんと暦帳に書いておいたし。
すると、俺の暦帳を見たルシクラージュさんは、なんだそれは、と目を輝かせる。
「へぇぇー、いいなぁ、これ。あ、シュリィイーレの聖教会迎祠の儀記念品か。あの映像、シュリィイーレで見られるんだってなー。俺も見たかったなぁ」
そうだったのか。
行った時にタクトに頼んでみよう。
「そうそう、
「えっ、あ、ああ……ん?」
ルシクラージュさんに背中を押されて受付の卓の前まで来ると、以前も訓練申込の手続きをしてくれた隊員からにっこりと笑顔で一枚の紙を渡された。
……衛兵隊体術訓練申込書……?
「え? なんで?」
「訓練期間と条件を見て見ろよ」
書類に目を落として読み始めるとそこには『訓練期間・
更に『期間中の
「な? 申込者が少ないんだよ、今年のこの期間は。だからまだまだ余裕はあるし、屋内の訓練は朝の一刻間だけで後は『野外訓練』になるから、町に出てもいいし、訓練場の庭の走り込みとかでもいい。ま、夕食前にちょっと訓練するがな」
「朝夕の訓練だから、泊まりになるってことなのか?」
「そうそう。体術はあんまり人が集まらないから、訓練場を使える時刻がそこだけなんだよ。あ、ちなみに教官は俺だ」
「申し込む」
「よーーっし!」
最高じゃないか!
ここは安全だし、食事も旨いしっ!
あ、だけど『特別行事』の三日間は……食堂もやっていないのか。
だけどその三日は、外で食べる方が楽しいだろうから、問題ないし!
「助かったよ。ありがとう、ルシクラージュさん」
「なんの、助かったのは俺の方だよー。申込が五人未満だったら、俺がここの宿舎を使えなかったからなぁ」
どうやら訓練希望者が五人以上いないと、教官役の人は自宅から通うことになってしまうようだ。
ルシクラージュさんの自宅は西側にあるらしく、ロカエに近い東側のここまではいつも『門の方陣』か『移動の方陣』で来ていたらしい。
この期間内の
そーか、ロートレア教会で婚姻式の警備に入るのか……
だったら、ここからの方が近いもんなぁ。
「そうなんだ。教会には『移動』ができないし、ロートレアの町中は馬車方陣も止まる。訓練講習、受けてくれてホントーに助かったぜ!」
そして俺の背中をパンパンと叩いて、機嫌良く事務所の奥へと入っていく。
申込用紙に記入を終えて出す時に、こっそりと聞いてみた。
「この時期、申込が少ないって本当なのか?」
「……まぁ……少ないと言えば少ない、けどね。丁度、王都で騎士位試験の本試験が被る日程だし。でも、予備で落ちた子達が来るから……五人以下ってことはないんだよね」
受付のビューローさんは、内緒だからね、と耳打ちしてくれた。
くすくすと笑いを漏らしながら。
「ルシクラージュがね、絶対に宿泊付きのひと枠だけは空けておいてくれって言ってきたんだよ。いつもなら、王都の本試後になる
だと思った……俺が剣技を習った時だって、体術は混み合っていたもんな。
なんていうか、本当にセラフィラントの人達の親切ってのは、押しつけがましくないんだよなぁ。
でも多分これに慣れちゃうと、鈍感になって図々しくなったりするのかもなー。
気を付けよう……うん。
シュリィイーレに行ったら、ルシクラージュさんに暦帳、買ってきてあげようか。
あ、でも内緒のことなのに『お礼』とは言えないか?
うーん……どうしよう?
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