陸第45話 オルツからティアルゥト
オルツに着いた時には当然真っ暗になってしまっていたので、夜間施設で一晩過ごさせてもらうことにした。
あー、やっぱりここの食堂、結構旨いなー。
だけど、肉だった……今朝も昼も肉料理だったから魚、食べたかったかも。
明日はロカエまで行って、魚を食べてから……あ、いや、カバロの機嫌を確認してからだな。
それと……ロートレアの陸衛隊訓練所に行かなくちゃ。
ルシクラージュさんと約束していた、
そしたら翌日はまたダフトか……ちょっとあちこち行き過ぎだなー。
「ただいまー……」
翌朝、少し早めに手続きを終え、朝食前にティアルゥトに戻った。
タルァナストさんはいつも通りのんびりと笑顔で『お帰りー』と迎えてくれたが……カバロの機嫌は、予想通り最悪だった。
なんだよぉ、おまえが行きたくないって動かなかったんじゃないかぁぁ。
ぶふっふぉんっ!
タルァナストさんがニコニコ笑って、カバロ達の餌を運んでいるので手伝いつつ手入れをしてやると少しだけ機嫌が良くなる。
あ、そうそうっ!
タクトから『試作品』っていうカバロの菓子をもらったんだった。
えーと……あ、
へぇ、馬の菓子にも使うのかー。
「あ、ガイエス、それって馬用のお菓子?」
「そうみたいだ。一袋に結構入っているから、みんなにもあげてみてくれよ」
カバロの分を取ってから袋ごとタルァナストさんに渡したら、とんでもなく吃驚した顔をする。
何か変なこと、書いてあったか?
「こここここここれっ、ででででで」
「頼む、落ち着いてくれ」
「これっ、デルデロッシ医師監修って! 作るのに、デルデロッシ医師が関わっているってことっ? うわーうわーうわー!」
タルァナストさんって、吃驚するだけでなく嬉しくて堪らないって時には動きが速くなるんだよなー。
こんな風に、袋を両手で上に掲げるように持って、クルクル回っているのは初めて見たけど。
馬達はそんなタルァナストさんを生温かーく見守っているみたいで、騒ぎ出さないのはいいんだけど……回り過ぎて壁にぶつかりそうで怖い。
あ、自分で食べた。
「んっと、えっと、うーん……甘いけどなんだろ?
「
「ガイエス、お菓子は食事をしてから、だよ!」
……はい。
じゃ、カバロもお菓子は食事の後、な。
ヒヒンっ!
完全にご機嫌になった。
菓子の威力は絶大だな……タクトに買うって連絡しておこう。
朝食後に食べさせた
勿論、人用の『煉り柬埔寨瓜』も、タルァナストさんから大絶賛だ。
そうだよな、この菓子はしとっとしてて、むにっとしてて旨いんだよなー。
「そうだ、タルァナストさんの飼料……これが買いたいって」
タクトが送ってきていた『空袋』をタルァナストさんに渡すと、一番多く作っている飼料だから沢山用意できるよ、と言ってくれた。
だけど、少しばかり心配そうに呟く。
「量次第だけど、何度か買ってくれるんだったら、商人組合を通して契約した方がいいかなぁ……」
「それなら大丈夫だ。タクトが商人組合登録してて、俺はタクトと『個人取引契約』してもらったから、買い付け量も価格も問題ないと思う」
「そっかぁ! それならよかったよぉ。買い取ってくれる人と、商人組合で契約書を交わす必要が出て来るかもって心配していたからさぁ!」
そうか……タクトとしてはこっちの準備のために、契約を整えてくれていたのか。
よかったなー、色々間に合ってー。
タクトの分の飼料は二、三日後には用意できると言うから、それをタクトに送ってから一度シュリィイーレに行こう。
「あと……これは今回の『お土産』」
「わぁ、綺麗な入れ物だねぇ! 青銅製かな?」
「えーと、ああ、そうみたいだ。飾りの石は水晶だって」
タルァナストさんは、いつも焼き菓子を小箱に入れて卓の上に置いている。
だけど、木でできた箱がそろそろ古くなって買い替えようか、なんて言っていたんだ。
丁度よさそうな大きさの綺麗な箱が競りに出ていたから、買ったんだよな。
安かった割に水晶が付いていたんで、タクトから説明聞いた時も驚いたんだよ……透明な石って、よく解らないものが多いんだよなー。
きっと、ヘストレスティア側も小さくて魔石にもならないから、安く値をつけたんだろうな。
「……凄いなー。ちゃんと鑑定書が付く品なんて……使うのが勿体なくなっちゃう。飾っておこうかなぁ」
「菓子を入れて置いておけばいつでも眺められるから、その方がいいと思うけど」
「あ、そーか、それもそーだねぇ。はははははっ」
はー……和むなぁ。
さーて、カバロと散歩にでも行こうかなぁ。
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