第2話 警告音
なんやから、中学では一緒に帰る、それだけの存在に堕落していってしまったが、頭の良いラネと、中途半端な成績のレル。
ラネが選ぶ高校は必然的に、レルのレベルに合わせた高校になった。
何とか、高校に入っても、行き帰りのレルの隣は死守出来た。
「あー!今日から高校生だよ!ラネ!楽しみだね♡」
「うん。出来れば同じクラスが良いなぁ…」
「…ふふふ。レル離れ、まだ出来ない?」
「は?」
「もう!ラネなら絶対私よりいい高校行けたのにぃ」
「僕は…がり勉になりたくなかっただけだよ!高校生活が四六時中勉強で終わるくらいなら、レル…と、とかと一緒に遊ぶ時間が欲しかっただけなんだから、良いだろう!?」
「あら、気合入ってますなぁ。可愛い彼女出来ると良いね。まぁまぁラネは格好良いいんだから!」
そう。
ラネの情けないところしか今まで書いていたが、ラネは、見た目はレルに言わせれば、まぁまぁだったけれど、普通に見れば、結構イケメンだった。
「な~んで中学で彼女、ずっと作らなかったの?ラネ」
「う、うるさいなぁ…。だったらレルはどうなんだよ…す、好きな奴…とかいなかったのかよ?」
「うん。いなかった。もうみんな大きな大親友軍団だったから。好きとか恋とか、勿体なくてさー。もう、わちゃわちゃルンルン言って楽しみたかったから!」
中学時代、クラスが違っても、さっき話した通り、レルは1人で1組から8組を牛耳ってるような何だかドラゴンクエスト勇者のように、みんなの真ん中にいた。
「でも…」
ラネは、突然、現れた『でも…』に、慌てて耳を傾けた。
「でも…高校入ったら、そーゆーのにも力入れたいなぁ…とは!思ってるよ!」
と、レルには珍しく、女の子らしい、ウィンクまでして見せた。
「へ、へー…」
『これは気が気じゃいられない』
ラネは即危機を感じた。
レルは、高校に入ったら、変わるかも知れない。
もう、行き帰りの隣も危うくなってゆくかも知れない…。
「レル」
「…」
「レル」
「…」
「レル?」
「…」
「レル!!」
「!え?」
「どうしたんだよ、何度も呼んだのに…」
「あぁ…ごめんごめん!ちょっとぼーっとしてただけ!で?何言おうとしたの?」
「あ…の…だから…」
「あ!入学式まで時間無い!ちょっと遅く出過ぎたね。ほら、早く行こ!」
「う…うん」
(レル…なんだよ、今の沈黙は…)
ラネは、何だか、無性に焦るような心境になった。
そして、1人で校門へ走るレルが、ふと右顔が何かを覗いた。
その後、少し頬が赤くなったのを遠くで見たラネは、とても嫌な予感がしたんだ。その右顔が向かった方向へ、そーっと何を見ていたのか探すと、ラネはレルの頬を赤くしたものが何だったのか、はっきりわかった。
(あいつを…見てたのか?)
そのラネの視界にも現れたのは、身長180以上、足が長くて、ちょっとくせっ毛で、眠たそうな顔をして、周りに2、3人の女の子のガードをもらい、それでもふてくされたような目で、大きくあくびをした。
ラネも、まぁまぁのイケメンだが、正直…敵わない格好良さだった。
(レル…あいつを見てたのか…?)
ラネの胸の鼓動が大きな音で警告した。
これは…ヤバイ…、と。
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