三角関係のいろは

第1話 出発進行!

「レル!待ってよぉ…」

「もう!ラネ遅いよ。置いてっちゃうよ?」

「だって…幼稚園はバスだったから、体力要らなかったけど、小学生になってから、3キロだよ?レルみたいに早足で歩けないよ…」

「もう…本当にラネって甘えんぼだね。ほら行くよ!」



この子ら2人、お隣さんで、同い年に、同じ月に生まれ、2人が生まれた時の年賀状には何故か、両方の親とラネとレルどちらも載せる事が決定し、それが小学校になっても続くほど仲の良い2家族だった。


もちろん、そんなわけで、ラネとレルは、それはもう双子のようにお互いの親に可愛がられ、例えどちらかの親が2人ともいなくても、合鍵で、冷蔵庫の中の中身をあさり、プリンだの、バナナだの、チョコレートだの、レルもラネも“遠慮”などと言う言葉はこれからずーっと後から覚えて行く事になる。


レルは、しっかり者で、毛虫がラネの頭に落ちて来てラネが大泣きした事があった。

そんなラネの頭を、スパコーン!!と、毛虫を追い払ったのか、ラネのあまりの男らしくない泣き顔に、気合を入れたのか、よく解らないが、レルはラネの頭を叩いた。


「…レル、もう…毛虫さんいない?」

「ラネ、泣くほど嫌いな虫に“さん”つけないでよ」

「う…ごめん…でも毛虫さん怒るかも知れないし…もっといっぱいお友達、連れて来ちゃうかもしれないじゃん…えっぐ…」

「はぁ…」




ここまでを、レルとラネの第一章としよう。




第二章は、中学三年生の卒業式に幕は下り、そして、幕開けしてゆく。

2人の…いや、ここから、ラネの気持ちが色づいて、只の幼馴染ではなくなる事件が起きる。



中学までは友達も小学校が一緒の子も多かったが、高校生になると、一気に人間関係が変わってくる。

まるで、、そんな言葉が近いのかも知れない。


「ねぇ、レル、写真撮ろう!高校違うしさ!」

「泣くなよぉ、ユリィ…!」

「泣くよー!もうレルはぁ、私にとってすっごい大親友なんだから!!」


レルの周りには男女問わず、多くの友達が押し寄せていた。

サバサバしてるのに、情に厚く、レルはクラス中心のような存在になっていたのだ。

その中に一番泣いて、みんなから頭をなでなでされるいるのが、柴木しばきユリだ。

ユリは、レルの中で何だか妹のような存在だった。

背が小さくて、髪の毛は少しくせっ毛で、男気溢れるレルの包容力が幸いし、三年間、一度もクラス替えがなかった事も功を奏して、本当に姉妹のように、ユリはレルにくっついて離れなかった。


そんな、クラス替えが一度もなかった事を恨んで、いつもくっついてレルの隣を奪い取るユリに、嫉妬している男子が居た。


ラネだ。


(なんだよ…俺だって…レルと写真撮りたいのに、いつまで話してるつもりだよ…)


なんて、異性にも嫉妬してしまうくらい、


『幼馴染にはもう戻れない』


ラネが心の中で呟いた。


そう。

ラネは、もう小学3年生の時、2月14日、レルが、男女クラス全員の分のチョコを作り、義理でばらまいた…のに、ラネには本命どころか、

「あ…あのさ、レル、僕の分は?」

「あぁ、ラネにはうちの冷蔵庫にメルティーキッスひと箱あるから、帰ったらあげるね!」

「え…あ…」


バッサリ。


その時、その“チクン”と胸に刺さった針が、レルが自分にとって、とても大切な人だと、1人の男として、思い知った。


これは…、この“チクン”は、『恋』だという事を。


ラネの、初恋、出発進行の日となった。

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