電話

 りりりん、りりりん、と鳴る黒電話の受話器を取ったのは三本ある右腕の一本だった。

「はいはい、四つ腕眼科です」

『私だ。紙野だ』

「おう、外科医さんか。何か用か?」

『今しがた、例の少年の診察を終えたよ』

「そうか。面白いケースだろう?」

『確かに。本人はそう思っておらんようだったが』

「だろうな。あれはいろいろ苦労してきた顔だ」

『しばらくこちらに滞在するのかの?』

「そうらしい。こっちでの保護者も住まいも決まっておるそうだ」

『その方がいいだろうな。ここ、死なぬ路なら、案外あの子も安らげるやもしれん』

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