受診その二
その一目見ただけで僕らとは理を異にすると分かる自称外科医は平面的な厚さのない身体を揺らめかせながら言った。
「この右手で、生き物の生気を払えるって話だったね」
僕は頷いた。
「今しがた実際に見せてもらったけど、興味深いね」
「でも、何でも払えるわけじゃないみたいです。なんとなくですが、ここにいる人たちは無理な人の方が多い、と思います」
「ふむ。と言うと?」
「見た感じ、生気が外の人たちとまるで違うんです。質感が違ったり、量が違ったり。それで分かるんです」
「『この生気は払えない』と?」
「そう、です……」
自分の言っていることに自信がなくなってくるとともに、僕の声もじょじょに小さくなっていった。
「その感覚は正しいだろうね。ここの住人は外の枠にとらわれない者ばかりだから」
ただ、とその外科医はペラペラの指をこちらに向けて告げた。
「それは自身の力だけでは無理、というだけかもしれないね」
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