身からでた果汁

カクヨミ

第1話

繰り返しに退屈が熟れる

壊れたドアノブに手を掛けた

味のしない町 灰色の空 枯葉の落ちない木 遠い一日

誰かが幸せを連れてきてくれたら 

切実な欲に足を滑らせた


誰だって幸福になる権利があると思想家が謳っても

行使する方法が分からないから混乱して摩耗する 

今は不幸なのかってそんなことはないって

すれ違う人に嫉妬だけ向けても虚しいだけ

どうしたらそんなに笑って歩けるんですかって

聞く私は隙間に咲く花にさえ呆れられるだろう


繰り返し熟れた実が落ちる

固い地面を叩いて転がるドアノブ

このまま売れ残る 愁い忘れ腐敗する

誰かが幸せを引き出してくれたら

愚かさに多くを統べらせすぎた


誰もが苦悩と葛藤を抱えていると諭すから

慰めにしか聞こえなくても惨めに納得する

不幸に思いを馳せるより目に見える幸せが

羨ましいのはどうすればいいって 

必死に隠してつまらなくなるんだ

そうだ、いつだって私が感じていたものは陰気な劣等感で

幸福になる方法を知らないから熱望することしかできなくて

それを消す方法が負けないくらい幸せになることだって分かってるのに

ああなんて醜いんだろうか もう飽き飽きだ


誰かの力で幸せになりたかったなんて
















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