1章 シルヴェン伯爵家の一騒動②
母は、
この半年間は伯爵家の財産が仮
それでも、半年ぶりに主人を
リューディアの
資金調達のためにいくつものドレスを売ってしまったけれど、母の
「それにしても……いきなりお父様の無実が証明されたなんて、信じがたいです」
リューディアが言うと、向かいに座っていた母も
「手紙には、最低限のことしか書かれていなくて。……でもどうやら、お父様の身の潔白を証明するのに力を貸してくださった方がいるようなの」
「えっ!? どんな方ですか!?」
アスラクが身を乗り出すが、母はゆっくりと首を横に
「それは、分からないわ。でもお城に行けばきっと、その方にもお会いできるわ」
母の言葉を聞いてアスラクはひとまず安心したようだが、リューディアは
(これまで、私たちが半年かけてやっと事件について
そもそも、母の言う「力を貸してくださった方」の意図も分からない。
今回父が
ビルギッタは
だが
それなのに、降って
(その方は……どんな方なのかしら。そして、なぜこんなことをしてくださったのかしら……)
リューディアは
リューディアたちは、国王の
母やアスラクは城の者たちの視線に
(むしろ、同情やいたわりのような気持ちを感じるわね……)
使用人たちは頭を下げてきたし、貴族たちも
(本当に、お父様の潔白が証明された……?)
半信半疑ながら向かった執務室だったが、そこで父と再会できたことでさしものリューディアもふっと体の力を
「あなた!」
「すまなかった、
すぐさま
「お呼びに応じて参りました。シルヴェン伯爵が長女、リューディア・シルヴェンでございます」
「よく来てくれた。そして……
父よりも二つほど年上だったと思われる国王は
「……ビルギッタの件は、完全に
「……かしこまりました」
そこでリューディアたちはソファに案内され、事の
● ● ●
──半年前のあの日、王城では当時セルミア王国に遊学中だった
その場で、隣国王女とセルミア王国のある公爵家令息の
……だが、それを聞いたビルギッタ王女が
ビルギッタは会場から
● ● ●
国王の説明に、リューディアとアスラクは息を
(……もしかしてその、突き落とそうとしたというのが……変な動きをしていた、というのにつながるのかもしれないわ)
そういうことだったのか、と
「現場には、多くの使用人や兵士たちが居合わせたでしょう。でも、そのような証言は今日まで聞いたことがありません」
「ああ。……ビルギッタが、その場にいた者を
国王は、かぶりを振った。
「……マルテの姫君も、悲鳴を聞いて振り返った先に
「……では、陛下。多くの『証言者』がいる中で、なぜ父の無実が証明されたのですか? 協力者の存在があったとは
リューディアが問うと、国王は顔を上げた。
「……伯爵を投獄して、一ヶ月ほど
「え? ……ええ、存じております」
急に話題
魔物と人間との戦いは、昔から続いている。
魔術師は、先天的な魔術の能力を持つ者のみなることができる。たいていの国には魔術師養成機関や魔術師団などが存在しており、このセルミア王国にも王国魔術師団があった。
魔術師になれるかどうかは遺伝の要素に
(東部での討伐作戦でも、魔術師団の
魔術師たちが東部へ魔物討伐に行った、見事倒してきた、ということくらいは、当時
「その討伐作戦に、ある平民階級出身の
そう言う国王の表情は、少しだけ複雑そうだ。
人は母親の腹に宿った際、属性の祝福を受ける。
つまり、リューディアのように魔術師でない者も何らかの守護属性を持っているのだ。たいていは判明しないままだが、たまに魔術師との間に生まれた子が持っていた属性から、非魔術師の親の守護属性が分かることもあった。
そして──十属性の中で、闇属性は
八つの属性に
セルミア王国の魔術師団では様々な属性の魔術師をまんべんなく受け入れているが、闇属性の魔術師が
「闇属性とはいえあまたの魔物を
「……え?」
(……な、なにそれ?)
まさかここで話がつながるとは思わず、リューディアだけでなく静かに話を聞いていたアスラクたちも呆然としたのが分かった。おそらく父も、ここまでのことは知らされていなかったのだろう。
「
父が
「彼は、非常に
リューディアたちは、絶句した。
魔物を大量に倒した褒美となれば、金でも
だがその闇魔術師は褒美として、シルヴェン伯爵家の汚名返上を申し出た──つまり、その魔術師こそがリューディアたちの恩人なのだった。
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