【25/30】Q.アクシデントがあったゲームの話

 ……真面目な話が続いたので、ここらでひとつ、アホな話でもしますか。


 とあるゲームの話です。

 動物園が舞台だったんですよ。新種のウイルスを投与され、凶暴化した猛獣から逃げ回りつつ出口を目指す……という、脱出型のゲームでした。コンセプトとしては、そのはずだったんです。

 しかしですね……プレイヤーの中に、動物博士がいたんですよ。

 たまにいるじゃないですか、あらゆる動物に好かれるタイプの人。あれがプレイヤーにいたんです。彼女を前にすると、トラもライオンも骨抜きにされまして。猛獣との戦闘は一回も起こらず、出口まで直通。楽々クリアとなりました。

 私もそのゲームに出場してたんですけど、すごかったですよ。そのプレイヤーのあとに、ぞろぞろと、動物たちがついてくるんです。パレードみたいでしたよね。面白いっちゃあ面白い光景でしたけど、ゲームとしては取れ高ゼロで、全員無傷でクリアでした。

 あのゲームの担当者……そんなのがいるのかは知りませんけど……いたとしたら、さぞかし怒られたんだろうなあ。相手は動物ですものね。ゲームの命運を全部それに託してしまうと、こういう事故も起こりうるってことですね。


 私が経験したゲームだと、もう一個あったな……。

 謎解きがテーマのゲームだったんですけどね。扉を開けるのに必要な鍵が、劣化してたのか、真っ二つに折れちゃいまして。まともな形でのクリアは望めない状態になったんですね。

 仕方ないので、扉をぶち壊して先に進んだんですけど。

 そっからどうも、様子がおかしくなっちゃったんですよね。ぶち壊して進むのもありなんだって認識が、プレイヤーの間に広まっちゃって。そこからはもうひどいもんでしたよ。ダイヤル錠を壊して中のアイテムを回収したり、通気口を通って順路を無視したり……。謎解きと呼ぶべきものはおよそ行われず、力技でクリアしちゃいました。

 ……これが尾を引いているのか、以後、この手のゲームはめっきりなくなりましたね。


 運営といえども、完璧じゃないですからね。そういうアクシデントが起きることもあります。

 でも、最近じゃもう、めったに見かけませんよ。どのゲームも、まあ、そこそこに想定通りの展開になって、そこそこにプレイヤーが死んだり怪我したりします。私たちにとってはありがた迷惑な話ですけど……ゲームとしては、ちゃんとバランスのいいものになってます。

 成長してるのは、プレイヤーだけじゃないってことですね。

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