前のエピソード――【15/30】Q.時間の使い方について

　それにしても……。着替えられなかったじゃないですか、結局。エージェントさんのせいで。

　いや、もういいです。こんなにも長く映ったら、今更繕ったところで意味ないですしね……。

　ジャージ姿でこんばんは。これが寝起きそのまま、無修正の私です。好きなだけ映してください。

　……ああ、まあ、寝起きにしては見れなくもないかもしれませんね。

　〈防腐処理〉の恩恵ですよ。あれのおかげで、なんとか放送事故にならずに済んでます。

　この話って、詳しくやっても大丈夫ですか？　OK？　それじゃあ、少しばかり失礼しますね……。

　〈防腐処理〉。プレイヤーに施されている、肉体改造の総称です。

　ゲームに参加するに際し、いろいろと体をいじってるんです、私たちは。

　……いや、別に、サイボーグってわけではないですよ。基本的なところは、普通の人と変わりありません。そうじゃなきゃ、殺人ゲームの意味がないですしね。

　具体的にどこが違うのかというと……いちばん大きいのは、血が固まるってところですね。

　例えば、ゲームの最中に、腕をばっさり切断されたとするじゃないですか。ノコギリとか、レーザー光線とかで。その場合、まあ当然、切られたところから血が噴き出してくるわけで……すぐに止血しないと死んじゃいますよね。

　でも、私たちの場合、なにもしなくても勝手に血が止まるんですよ。噴き出した血液が空気に触れると、白いもこもことした物体に変化するんです。それが血を止めてくれるんですね。

　だからプレイヤーは、普通の人よりもダメージに強いです。止血をミスったとか、やり方を知らなかったなんてことで、プレイヤーの生死が決まっちゃうとつまらないですからね…… 。そういうのを防ぐための処置です。

　ほかには……そうですね。体臭がしないっていうのもありますよ。連日続くゲームだと、お風呂とか入れないこともありますから。匂いがしないほうがやっぱり嬉しいですよね。あとは……死んでしまったプレイヤーの遺体が腐りにくいとか。遺体が腐敗してハエがたかるとか、あんまり見たくない光景ですしね。あとはまあ、こんなふうに、寝起きでもそこそこ綺麗な顔をキープできたりとか……。効果はさまざまです。

　このゲームって、興行物ですからね。ゲームの絵面が過度にグロテスクなことにならないよう、こういう工夫をしているわけです。

　……しかし、プレイヤーのほうはたまったもんじゃありませんよね。そんなわけのわからん改造されて。

　無断でされてるんですよ、これ。ゲームの参加に同意して、眠らされて、会場に運ばれる間にこっそりと。ひどい話ですよね。

　まあ、ゲームそのものよりはひどくないんでしょうけど。