【9/30】Q.師匠の話

 私の師匠……そういえば、詳しい話はまだでしたね。


 白士ハクシ、という名前のプレイヤーでした。

 その名の通り、白い髪をした女の人です。手足がすらりと長くて……大理石で作られた彫刻みたいな、人体の理想のプロポーションを持っている人でした。そこにいるだけで空気が変わるというか、威圧されてしまうというか……とにかくすごい雰囲気がありましたね。

 もちろん雰囲気だけじゃなくて、腕前のほうも確かなものでした。ゲームのクリア回数は、驚きの九十五回。私が出会ったプレイヤーの中だと、文句なく最強でした。


 師匠と出会ったのは、確か三回目のゲームだったかな。

 そのときは敵同士だったんですよ。西部劇がモチーフの、銃で撃ち合いをするゲームだったんですけど。偶然ばったりと出くわしてしまって、当然のようにあっさりやられて。でも運良く命は奪われずに済んで、そのまま弟子入り……みたいな流れでした。

 初心者が長生きするためには、師匠を見つけるのが大事って話がありましたけど……私の場合は、探さずとも偶然出会えてしまったわけです。しかも、殺されるべき場面なのに命拾いしてるわけですからね。今思えば、すごく運がよかったです。


 ……いや、そうともいえないのかな。

 だって、かなりひどい人でしたからね、私の師匠。

 顔とスタイルはいいんですけど、性格は最悪でしたよ。いっつも不機嫌そうな面で、口を開けばバカだのアホだの暴言ばっかりで……当たり前のようにスパルタ教育でしたしね。あのとき殺されてたほうがマシだったんじゃないか……なんて思うことも多々ありました。

 おかげさまでプレイヤースキルは伸びましたけど、本当にしんどかったですよ、当時は。


 なにを学ぶ上でも、それなりにしんどい思いはすべきなんでしょうけどね……。あそこまでの厳しさは絶対必要なかったと思うんだよな。

 師匠もああいうふうに育てられたんでしょうか。だとしたら、私の代で打ち切りにしないといけませんね。私が弟子を取ったときには、過度なスパルタは絶対にやらないと誓います。


 ……まあ、今のところ、弟子をとる予定はないんですけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る