第十五章 尻に敷かれる亭主たち
男は女房殿の悪口に盛り上がる
さて、しばらくは怖いぐらいの平穏無事な日々を過ごしていましたが、遂に塩の話が正式に決まりました。
採掘権を譲渡、私は両国より毎年25万ランドいただくとともに、この件に関しての税については、25万ランドに含まれることになりました。
近頃は両国君主による会談は定期的になり、毎月1回、その月の第三日曜の午後一時半に行うことになっています。
そして第三日曜の午後一時半……私たちが『楽園温泉』と呼んでいる、いつもの温泉で……
「ヒロ殿よ、指定の場所を掘削してくれたと、マガタから報告があった」
「こちらもカニンガムからあったぞ」
「いえ、この度は税を免除していただき、ありがとうございます」
「やっと伯爵当たりの収入の目途が立ちました、妻や愛人たちには肩身の狭い思いをさせていましたが、少しホットしております」
「これからは、ご挨拶も断られているデッセル伯爵とコール男爵に、妻ともども頭を下げに行けます」
「話は聞いておる、ヒロ殿も大変よの、皇帝よ、デッセル伯爵とコール男爵に口をきいてはやれぬか」
「そうよの……何かのおり、声をかけておこう、コール男爵の方は不問にすればそれでよかろう、その後、ヒロ殿がコールの息子の病を治してやればよかろうよ、コール男爵の息子の為にしでかしたことだからの」
「ただの……デッセル伯爵は名誉を何より重んじる男……声はかけておくが……誠意をわからぬ男ではないので、ヒロ殿とエルザが頭を下げる必要があろうの」
「分かりました、門前払いに会いましても、エルザさんと二人で、何回でも押しかけてみます」
皇帝陛下が感心したように、
「ヒロ殿はエバには過ぎた婿よの」
「ところで両陛下、『グレートローズヒップ』の話はお聞きになりましたか?」
国王陛下が、
「聞いたぞ、そろそろヒロ殿もわかってきたのではないか?アイリスとマリア、儂はあの二人に尻に敷かれておるのでな、あれぐらいの話は丸投げよ」
「クレアは母親よりさらに手ごわくなるぞ、マーガレットも大したものぞ、ヒロ殿はドロアの正妻を知っておるだろう、マリアと大して変わらぬぞ」
「おいおい儂の苦労もわかるであろうな、婿殿よ」
皇帝陛下が笑いながら、
「余の娘、エバもおっとりしているが芯は頑固での、幼いころはクリスティーネが持て余していたぞ、エバは頭が切れるから馬鹿をしでかすと、軽蔑したような目をする」
「さらにいえばデッセル伯爵の娘、エルザも気が強いぞ、儂が薦めたのでなんだが、色恋で目が覚めたようで、身を引くことを覚えたようだが、云いだしたら聞かぬと思うぞ」
「いま、国王の話を聞いて、我が婿殿は、少なくとも我より苦労すると思うぞ、婿殿は妻がクリスティーネとするなら、操縦できる自信があるか?」
「どうやら婿殿の妻はクリスティーネ級が四人、我にはそんな自信はないぞ」
ニヤニヤしながら国王陛下が、
「まあ、儂らは小うるさい娘を押し付けたので、少しは楽になったようだ、同情するぞ、婿殿よ」
皇帝陛下が、
「国王よ、我が娘婿殿はよほど自信があるのであろう、時々、女の扱いについて、ありがたく拝聴しようぞ♪」
「そうよの、奥方たちの操縦方法をご伝授いただこうかの、婿殿よ♪」
皇帝陛下が、
「まあ、それだけのモノをぶら下げておれば何とかなるのだろうよ、余力がありそうだ」
国王陛下が、
「それは儂も同意する、ならもう少しどうだ、貴族の持て余し気味の出戻り娘、結構居っての、塩の話が公になったわけだしの、婿殿の家柄は辺境伯、正妻は王女、さらには帝国の皇女も輿入れしておる家、望む家も出てくるぞ」
皇帝陛下も、
「婿殿は優良物件に成り上がったようだしな、王国もそうなのだろうが、帝国にも懐が苦しい家は多々ある」
「まあ、そうはいっても婿殿の妻や愛人は管理すると皇妃と帝妃が言っておる、エバがしっかり根回ししておるのでな」
国王陛下が、
「そちらもか、うちもの、アイリスとマリアがクレアに異常に肩入れして居って、『親睦会』で面談してふさわしくない者は撥ねると言っておる、同情するぞ」
「しかし助かるわ、このごろアイリスとマリアの小言が少なくなっての、息子ともどもホッとしておるぞ」
皇帝陛下が、
「お互い、妻には苦労するの、この間、うちの息子がの、これでエバに子が出来れば、ナーエ伯爵が母親の小言を一手に引き受けてくれる、娘ならさらに助かる、何て言っておった」
「ところで孫はまだなのか?クレア王女も治療したのだろう、早く作ってくれぬか?」
国王陛下が、
「それそれ、儂も同意する、早く作らんか、婿殿、やりすぎなのではないか?もっと貯めてドンとな」
さんざんにいじられていたヒロさんですね。
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