第二章 元人妻のお供をすることに

モーニングのあと、家は飛ぶ


 翌朝、

「クレアさん、朝食の後、空高く上がって、クレアさんの実家の方向を確かめたのち、この家で『還らずの荒野』を抜けましょう」

 ヒロさんが、朝食を並べながら、クレアさんに提案しました。


「お任せする……それと……私のことはクレアと……呼んでくれ……」

「分りました、とりあえず朝食にしましょう、質素な物で申し訳ありません」


 ヒロさん、いつもモーニングはパンの様なのです。


 『●マーク小麦めぐり』という6枚切りが、98円でありましたので、これをトーストで。

 トースターはかなり良い物を持っているヒロさん、愛用しているようです。


 スプレッド類は、これもコンビニの100円の物、なんせ、ウェブにリストがあれば取り寄せられますのでね、この力、通販限定ではないのです。


 チョコレートクリーム、ピーナッツクリーム、いちごジャム、ブルーベリージャム、マーマレードの五種類。

 ソフトマーガリンもね。


 牛乳はこれは100円でありました。

 『●マーク北海道3.6牛乳200ml』ですね。


 あと、ジュースは100%オレンジジュース!1リットルです。


 サラダは『6品目の彩りサラダ』というもの、一袋70グラムですから、二袋取り寄せですね。

 ドレッシングは小袋で売っているサイトを見つけたヒロさん。

 『ケース買いしても一個当たりの値段』に小袋は該当するようで、税抜741円で9種類18袋はいっていました。

 単価42円!100円以下ですから、文句なしに取り寄せられました♪


 一応お肉は『サラダチキン レモン風味』というもの、それに『ロースハム大判』もね。


 サラダとチキンとハムを盛り付けて、勧めながら

 ドレッシングなどの説明をしているヒロさん、なにかしら甲斐甲斐しいのですね……


「とても質素な物とは思えないが……」

「高い物が取り寄せられなくて……クレアさんの口に合うかどうか……私はほとんど毎日、このトーストと牛乳でした」


「いや、美味しい♪ヒロ殿と一緒に食べるのだから♪」

 面と向かって言われたヒロさん、どう返事すればいいのか、ウロウロしています。


「ご実家に戻られるまで、毎食ご一緒ですね……」

「そうね♪私、前の主人とは、二人だけで一緒に食べたことがないわ♪」

「クレアさんは上流の方に見えますので、二人だけとはいかないのでしょう」 


「そうかもしれぬが、実家に帰ってのちは、多分叱責され、平民落ちだ……」

「そうなのですか……」


「私はヒロ殿と、毎日一緒に食事が出来ればと夢見る……こんな私でも女の嗜みぐらいは出来る、いつか私の手料理をヒロ殿に振舞おう♪」

「ただ、正直にいえば、料理は下手なのだ、前の主人の為に料理を学ぶなんて気もなかったが、もし許されるならヒロ殿のために、上達の努力を惜しまない♪」


 クレアさん、ものすごいモーションですね……

 でもね、ヒロさんは自分はもてないと、堅く信じていますのでね、外交辞令と思っているようです。


「そろそろ、家を動かしましょう」


 玄関を開けて、ドローンが空を飛びだしました。

 見る見る家は上空へ……


「では、とりあえず、あの山へ向かいましょう」

「ヒロ殿、すこし下を見てみないか?『還らずの荒野』が一望だ」

「そうですね、こんな景色、滅多にみられませんので、登録しておきます」


 標高がかなり高くて盆地みたいになっています。

 よくドローンが飛んでいること……

 

 ドローンのバッテリーを替えながら、『還らずの荒野』を彼方の山の頂を目指します。

 途中、簡単な昼食をとり、やっと四時ぐらいに山を越えたのです。


「クレアさん、ご実家の方向が分かりますか?」

「うーん、多分だが、左前方の森が見えるだろう?町が見えるが、あの町は実家のある町へ続いている道があると思う……」


「そうですね……あれ、クレアさん、峠道があると云われていましたが、山の裏側を断崖絶壁が続いていますよ……」

「本当だ……どうあがいても『還らずの荒野』は通り抜けられないではないか!」


「あそこの崖の途中に平地がありますね、『還らずの荒野』にはありえない草が生えていますよ、あっ、池もある……」


 ここでメールが来たのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る