閑話 クレアのこころ


 ……それにしても、ヒロ殿は変わっているな……素直というか……

 ……しかし、私を助けてくれた、あの時はかっこよかった……


「馬鹿を云っている場合ですか!助けられる方を助けないなんてできませんよ!悪いですが無理にでも見せていただきます!」

「あとで何とでも非難してください!」


 ……あとで何とでも非難しろ……か……

 ……どうやらヒロ殿は、この世界の女の事は知らないようだ……

 ……知らない男に肌を見せるなんてことは、あってはならぬこと、しかも靴下を下げられた時、大事な所を見られた気がするが……


 ……あぁぁぁ、もう私はヒロ殿の物になるしかないのに……


 おでん鍋を食べた夜……

 私、目が釘付けになったわ……


 トイレから帰った後、ベッドの中で、寝られなかったわ……

 私は処女じゃないのよ!いちおう、あの馬鹿とも夫婦だったのよ!幾度かはベッドを供にしたのよ!


 あんなに大きいなんて!

 でも……四六時中、頭から離れない!私、どうしたのかしら……もう、ヒロ殿の事しか考えられないわ……

 妻に、いや、愛人でもいいわ! 


 ……父上は激怒なさるだろうな……平民落ちは確実、しかしヒロ殿の妻になれれば、それもよかろうな……

 ……そうだ、間違いなくヒロ殿は『神の加護』がかかっている、母上の鑑定なら、ヒロ殿のステータスはわかるはず……


 ……『神の加護』持ちに、私が降嫁しても、なんらおかしくはないではないか♪

 そもそも私は傷物、子をなせぬのは分っていた、父上はそんな私をあの男に押しつけた……

  

 事の顛末を報告しても、出戻り娘が、実家でウロウロとするのは、いささか風が悪い……

 私は間違いなしに、修道院入りとなるはずだ……

 でもヒロ殿に拾っていただければ♪渋々だが、父上もお許し下さるのでは?


 父上に、あの馬鹿が計画していた事を、お知らせする為に『還らずの荒野』を通らざる得なかった……

 ヒロ殿に助力を願い、ここまで送って頂いた、平民と云えど頼もしいヒロ殿に、私は嫁ぎたい……

 こう言えば……馬鹿の計画が計画だけに、功はある!


 褒美として、お父様はヒロ殿に私を下賜♪

 

 あれ、これはとても良い話では?

 ヒロ殿、私の胸にまんざらでもなさそうだし♪


 私、スタイルならいささか自信があるのよ♪

 胸も人並み以上にあるわ♪


 逃がしてはいけないわ!ヒロ殿、私にとってこれ以上ない殿方よね♪


 そうよ、クレア、ここは押して押して、ヒロ殿には私しかいないと思わせるのよ♪

 慎重にするのよ♪露骨な言い寄り方は嫌われるわ♪徐々にヒロ殿の心をからめとるのよ!


 それにしても、なぜ私はヒロ殿の前に出ると、あんな口調になるのか……もっと素直にならなければ……

 従姉妹のマーガレットを見習うのよ♪

 そうだ!常に心の中では『ヒロ様』とお呼びしよう♪私の未来の旦那様♪ご主人様になる方ですものね♪うまくいけばだけど……


 ヒロ様、私の名前に『さん』をつけてくださるけど、クレアと呼び捨てにしてくれないかしら♪

 

 とにかく実家につく前には、なんとしても既成事実を!そうよね、私、出戻りですものね♪女は度胸!色気はこの日の為のものなのよ!


 あぁヒロ様、ヒロ様、何が何でも離れないわ!

 クレアをヒロ様の物にして!

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