空飛ぶ家?


 クレアさんが、お風呂に入っている間に、神様にいただいた各種の能力の取り扱い説明書なんてものが、仮想タブレットにありました。


 さっそく、『収納の家』の説明書を読むことに……

「なになに、入った場所を登録しておける?」

 さっそく、登録したヒロさんです。


 一度登録すると、中から登録場所を指定できるのです。

 つまり『収納の家』を経由すると、瞬間移動が出来るわけです。


「あれ、これは上手くすれば、便利じゃないの♪」

 そこには、こう書かれていました。


 戸外に所有者が感知できる場合、常に所有者を感知できる場所に存在する。

 所有者が家に入った場合、最後に移動した場所に存在する。


「所有者を感知って、なにか私の身の回りの物でもよいかも?」

「これって、ひょっとして移動できるの?」


 試しにシャツを紐でぐるぐるにして、さらに紐をつけて、玄関を開けて遠くに投げてみますと……

 するすると紐を引っ張るようになり、『収納の家』の玄関前に、ぐるぐるにしたシャツがあります。


 次に、棒の先に括り付けて、玄関から突き出すと、棒が後ろに動き、玄関前に棒の先があります。


「これって、移動できるの?なら、ひょっとして……」


 今度は先ほどの棒を、玄関から斜め上に突き出すと……

 『収納の家』は斜め上に動いたのです。


「宙に浮いている……」


 そのまま、ぐるぐるにしたシャツを家に戻し、玄関を閉じて、再び開くと……

 『収納の家』は宙に浮いたままでした……


「飛べるんだ!」


 この後、色々確かめた結果、複数の所有者の身の回りを戸外に出すと、最後の物が優先されるようです。

 さらに言えば、玄関を開けても、外からは何も入ってきませんが、中からは出せるわけです。

 玄関は常に水平を保つようです。


「そういえば、どこかにドローンがあったような……」

 事実、ドローンは未使用の物がありました。

 手のひらぐらいのミニドローンで、初心者用ですが、20分の飛行時間、バッテリーは3個で、1個40分の充電時間。


「通販で衝動買いだったか……5,500円だったな……」

 

 ヒロさんが、ドローンを探していると、クレアさんがお風呂から出てきました。

 

 ヒロさんのルームガウンを着ていますが、その下は先ほどのブラとショーツのような……


「着ていた下着を洗濯したいのだが……」

「上着はいいのですか?」

「上着は明日、外に出るときに必要であろう?」


「それが……でなくてもいいようなのです……」

 ヒロさん、かなり懇切丁寧に、家の移動方法を説明したのです。


「では、なにか?家にいたまま、この『還らずの荒野』を進めるのか?」

「どうやら、空も飛べるようですので、崖でも川でも進めると思います、現にいまこの家は宙に浮いています、見てみますか?」


「見せていただけるのか?」

「どうぞ、外は相当寒いようですが、玄関を開けても、外のものは一切入れないようですので、あけても問題は無いようです」


 そうなのです、不思議なことに換気は勝手にされるようで、外気を取り入れようとする場合は、換気扇だけが取り込めるのです。

 この換気扇、いつの間にか吸気と排気が出来る物になっていました。


 クレアさんのために、玄関を開けると……


「確かに人の背丈ぐらい浮いている……かなりの風が吹き出しているが、ピクリともしない……」

「ヒロ殿、理解した、これなら『還らずの荒野』も抜けられる♪」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る