第13話 楽しい一日

翌朝。二人は温もりを肌に感じながら、

「おはよう…。」

小夜は花におはようのキスをした。


とりあえず、暫定的に花は妹と言う事にした小夜。

そして…


「おねえちゃん、顔、赤いよ?」

「はぁ、はぁ…ど、どの服も可愛い!流石花ちゃん!!今の瞬間だけは、服をやたら送り付けてくるデザイナーの母を敬う!!」


結局、それなりに年相応の服に決定。


「ん~~…」

「どうしたの?おねえちゃん」

「あっ、えーっと…」


出かけて外の世界を見せようとしたものの、自分はソシャゲ廃人だった事に気づき、有名スポットがわからないでいた。うーん、こんな時は…!


「ヘイ、圭一!」

「俺はSiriじゃねぇ。…別にアキバでいいんじゃね…そこら辺なら、お前でも多少案内できるんじゃないの」

「えぇ…せっかくならもっとお洒落な繁華街に~」

「行けると思っているのかね」

「ハイ…。」


行けないです。でも、花ちゃんの為なら…!と意気込む小夜。


「花ちゃん、お出かけいこっか!」

「お出かけ…いくっ!」

「いってらー」



別に繁華街じゃなくても良かった。花ちゃんには全てが眩しく見えたみたいで、


ファミレス、超高層ビル、川を流れるスワンボート、陽に反射してキラキラ光る海…色んなものに感動していた。

そして夕方、暗くなると、また景色が変わる。ライトアップされたショッピングモール…。


「…キレイだね」

「うんっ!」

(良かった…喜んでもらえたみたい…って、ん?)


花が雑貨屋のネックレスをじーっと見ていた。よく見たら2つで対になってるんだ…。

「花ちゃん、それ、欲しいの?」

「ん…」

遠慮してるのか、目を泳がせる花。

「それ、私も欲しいな。買おう?」

「~!おねえちゃん、大好き!」


「るんるん♪」

「あはは、ご機嫌だね」

「今日は、ありがとう!…小夜さん」

「!!花…ちゃん…?」

「ごめんなさい!おねえちゃんが欲しかったのは…本当なんです。それに…少しの間だけ…向こうの事を忘れたくて…。本当に、ごめんなさい…ぐすっ」

「花ちゃん…泣かないでっ!わかるよ、その気持ち…でも、戻らないといけないんだよね…私達は。」

「…はい。行かないと…向こうへ。」



「お、おっつ~、楽しめた?」

「うん…でね、圭一。私、あっちの世界に戻るよ。」

「はぁ!?マジか!で、でもまぁ、これでまた寝ている小夜の…ハッ!?」

気づいた時にはもう遅い。黄金のフライパンが圭一に直撃した。

「あの人…いいんですか?」

「ちょっとお灸をすえただけだよ?大丈夫大丈夫。さて、と…あれ?」


確かパソコンの最初の画面に、スフィアゲートって謎のアイコンがあったはずなのに…消えてる。ん?これ詰み?

その横で、花のちょっと震えた手が、小夜を呼ぶ。


「さ、小夜さん…」

「どうしたの?花ちゃん、そんなに怯え…て…!?」


パソコンから振り返った部屋の奥。そこには、今までになかった、鏡が鎮座していた。それも、どす黒いオーラを放っていて、明らかにあの鏡とは違う。


思わず手を繋ぐ、繋いでしまう二人。それがトリガーだった。


その瞬間。


二人は音もなく、鏡に吸い込まれていた。

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