第9話 そもさん
非常階段の先の地下に入り口があった。集合住宅の様な扉に鍵がかかってる。
スーからもらった鍵を回す。 バキバキバキッ 何かが壊れる音がした。
あれ? 鍵、壊しちゃった?
ドアを開ける。 開く。 壊れてない。 なんだったんだろう?
中はとっても高級そうなマンションの玄関だった。人が住んでる気配がある。
突如目の前にガリガリに痩せた鬼が現れる!ハルカに
カイと呼んでいる。
『ひっ! カイ、久しぶり。 心臓に悪いから突然現れないで』
「ミヤビちゃん!久しぶり! また
カイはハルカからは可愛い系の男子に見えているらしい。わたしからは
『そんなことよりカイ! ハルカは?』 「こっちの部屋にいるよー」
通路を通って部屋の一つに入る。
部屋の中はアンティークな家具にパステルカラーの装飾が施してある。
高級ホテルを可愛くアレンジしたような上等な部屋だった。
ただし、窓は無い。ここは地下だ。
そこにハルカがいた、珍しくガーリーな服装をしている。
『ハルカ! 良かった!』 「ミヤビ!」 ハルカと抱きしめあう。暖かい。
「良かった。ケイテツ様がミヤビを連れてきてくださったんだね!」
ん?
「ミヤビ、ケイテツ様は素晴らしいんだよ? なんでも知ってるんだ」
んんー?? カイを見る。 カイはわたしを見て首を横にふる。
「ミヤビちゃん、見ての通りハルちゃんは
ああ、やっぱり。 パッと見は元気なんだな。 ニコニコしている。
「でも大丈夫。僕にかかれば
人間の
ほんとぉ?
「じゃあ、早速。ミヤビちゃん、ハルちゃん手を取り合って。 そして、二人とも僕の手を取って」 言われた通りにする。 ハルカは不思議そうに手を取る。
「はい! じゃあミヤビちゃん、ハルちゃんを説得して!」
ええ! 丸投げ!? この悪魔。
でも、カイにはお互いの誤解を無くす能力もある。
『ケイテツはハルカを
「?ケイテツ様は私のために色々と手を尽くしてくれてるんだよ?私をお母さんやお兄ちゃんから守るために、こんなすごい部屋まで用意してくれちゃうんだから」
『じゃあなんで鍵をかけて閉じ込めているの?』
「閉じ込めてなんかないよ。お兄ちゃん達から私を守るための鍵だよ」
『それが本当なら、鍵なんてなくても話し合えばいいじゃない』
「ミヤビ。世の中には話が通じない相手もいるんだよ」
ハルカの気持ちがカイを通して伝わってくる。 気持ちはわかる。
『その通りだけど、これからずっと家族から逃げて生きていくの?』
「それが間違っているというの?」
『ハルカ、わたしは正解とか間違いという話をしに来たんじゃない。どんな生き方でも自分の人生は自分で作るしかない。だけど人生は一人では成り立たない』
わたしの気持ちがカイを通してハルカに伝わる。
『自分の敵を
それでもハルカは敵とも向き合って生きて行くことが、より幸せだとわたしは思う』
「そういうのはミヤビみたいに強いからできる事だよ」
『わたしはハルカの方が強いと思ってるよ。わたしは敵を殴ることしかできない。
ハルカは自分に降りかかる理不尽を受け止めていてすごいと思うよ』
「う、受け止めるのだって痛いんだよ! 辛いんだ!」 ハルカが涙目になる。
『そうだよね、辛いよね。 理不尽を拒絶して孤独になるのも悪く無いかもしれない。 それでもいいけど、ここでわたしから提案!』
ハルカを見つめる。
『わたしと外に出てくれたら、わたしがハルカを守る! 今ハルカが選ぶのは、ケイテツと一緒に敵を遮断して生きるか、わたしと一緒に外の世界で皆と生きるか』
ハルカと目が合う。
『わたしとケイテツ、どっちを選ぶの!? ハルカ』
「それは…………ミヤビだよ。 もちろん」
ぱん! カイが一回手を叩く。
「はい! しゅーりょー! ね?チョロかったでしょう?」
カイ、何かやったっけ?
______________________________
時が遡り、導師室。
ケイテツが
?以前感じた「ユキの気配」が感じられない。これなら戦えるかもしれない。
ケイテツとは一度戦って勝っているが、俺はあれから特に格闘技はやっていない。
ケイテツは続けて
「勝負だリュウシン。僕が勝ったらミヤビとハルカの事にはもう関わるな。
そしてユキのことも含めて全て忘れて生きるんだ」
右構えに構える。 昔から変わらない。
『そんなふうに言われちまったら、死んでも負けられないな』
俺も右構えに構える。 ケイテツと同じ構えだ。
以前から俺は打撃戦ではケイテツに勝てない。まして今やもう打撃に付き合うのは無理だと考える方がいいだろう。
ケイテツに勝つことより、ミヤビがハルカを説得して脱出した頃合いを見て、俺も逃げるのが現実的だな。
つまり、
ケイテツがジリジリ間合いを詰めてくる。
俺は回り込むように斜め後ろへと後退しながら間合いを測る。
俺はこいつの「
そしてまた同じように室内をぐるぐると回り込む様にして時間を稼ぐ。
露骨な時間稼ぎにケイテツも苛立ってきている。いいぞ。卑怯?戦いは無常だよな。
ケイテツの突きが
「甘い!」ケイテツの肘が
ケイテツの肘は「
汗が目に入る。 いや、血だ。 ケイテツの肘が
視界が一瞬奪われた
うぐぅ……
突如目の前に銀髪の少年が現れる。 昔会ったカルマイーターだ。
銀髪で水色がかった灰色の目に、旧日本軍の軍服みたいな格好している。
身長160センチ位の中学生くらいの少年だ。 見た目は可愛らしい姿をしている。
『お前! カルマイーター!!』
「リューシン! 久しぶりー! わ、わぁ、元気そうだね!」
これが元気に見えるのか、悪魔め。 ケイテツが驚いている。
『ミヤビはうまくやったのか』
「うん、ハルちゃんは大丈夫だよ。 ありがとう、リューシン」
良かった。 じゃあ、もう用はない。 ここから脱出しよう。
「だから、次はケイテツの事を助けて欲しいんだ」
は? どういう事だ?
「今回のことが失敗すると、ケイテツは本当に壊れてしまう。
自衛隊の武器を横流しし、自分の私兵を育てて本当のテロリストになってしまう。
それをやめさせるチャンスは今だけで、できるのはリューシンだけだ」
はあ?
「リューシンは人助けがしたくてお坊さんになりたいんだよね?
ケイテツを助けてあげて!」
『……どうすれば良い?』
「今は切れてしまったリューシンとケイテツの
簡単に言えば、ケイテツを倒してあげて!」
はあ……。俺は「誰かを倒せ」とか言われてもいまいち、やる気が出ないんだが。
だが「助けてくれ」って言われると
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