第4話 反撃開始

 町外れにある倉庫には見張りがいた。

 倉庫なんてものは家賃の安いところでやるものだ。ありがたいことに人気ひとけがない。

 そのため見張りの存在がよく目立つ。どう見ても普通の警備員じゃない。

 こんな時間に人を立たせているんだ。さぞ重要な何かがあるのだろうな。期待が高まる。


 ミヤビが殺気立っている。いきなり襲撃してもいい気分だが、それでは奴らとやり方が同じだ。まずは話し合いを試みよう。 


 『ミヤビ、俺が『良い』と言うまで攻撃するなよ?』


 「えぇー……?」 残念そうだ。る気満々かよ。落ち着け。


 バイクは離して停めてある。歩いて見張りに近づいていく。

昼の連中は見た目は普通の青年だったが、この見張りはいかにも悪そうな見た目だ。

こちらに気づいて警戒する。


 『こんばんは。もう、おはようかな? 誘拐された女の子を迎えに来たんだけど、いるかな?』


 「はあ?何言ってるんだお前?あっちいけ!」

見張りは当然、追い払おうとする。 ミヤビが殺気立つ。 落ち着け。


 『お前じゃあ話にならない。中にいる一番偉いやつに『迎えがきた』って伝えて来い』


 俺があんまり落ち着いて話すから、ボスの知り合いかなんかと勘違いしたようだ。


 「……ちょっと待ってろ」 見張りは中に入っていく。こいつバカだな。


 すぐ見張りが戻ってくる。

「お前なんか知らない!ここには誰もいない!とっとと失せろ!」

誰もいないって、今中に入ってったじゃん。 誰と話してきたんだよ。アホだろ。


 だがこれでこちらは話し合おうとしたことは相手のボスにも伝わったはずだ。

話し合い示談に応じなかったのはそっちだからな?


 『ミヤビ、『良い』ぞ』

ミヤビがこっちを見て「良いの?」と言う感じで見る。目がキラキラしてる。

ミヤビは女子にしては背がある方だが、見張りの男より二回ふたまわり小さい。どうする気だろう。



 ミヤビはニコッと笑って男に右手を差し出す。

「教えてくれてありがとう。はい、握手!」


「お? お、おう……」  動揺しているがちょっと嬉しそうだ。

 現役JKに握手を求められ、油断し切った男はニヤけヅラで右手を差し出す。


 突如、ミヤビは差し出された右手を引っ張りその反動で加速する!

 男の右腕の下から脇に潜り込み背後に回る。  一瞬だ。

 自分より小さい人間にあれをやられると自分の右手が邪魔で相手ミヤビが一瞬で消えたように感じる。


 感心してみてると、もうミヤビは背後から送襟絞おくりえりじめをかけている。

横から見てると、高身長彼氏の首に後ろから抱きつくJKみたいで可愛い。


 なんて考えてると、男の膝が折れて地面につく。

 『ミヤビ、もう落ちてる』  ミヤビの肩を叩く。

パッと、ミヤビが離れると男はその場に倒れ込む。


 「リュウシンさん、急ごう!」 床に置いた竹刀袋からつえを抜いて言う。


 『ちょっと待て、ミヤビ。 油断するなよ。

今のは奇襲だからできる技だ。ここにいる連中は昼の奴らより荒事あらごとに慣れている。

調子に乗っていると痛い目に遭うぞ』


 「……わかった。ありがとう。 ただ……」

ん?

 「もしハルカが傷モノにされたら私は相手を殺してしまうかも。その時はリュウシンさんが止めてね」

 だから、怖いよ。 この狂気はどこから来るんだろう?


 『わかった、止めるから。 だから、お前も可能な限り冷静さを心がけろ』


 俺は倉庫の従業員入り口のドアを開けた。

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