第17話 建造ツールその2
さて、どんな家を建てようか?
整地した地面に腰を下ろし、一人静かに考える。
……一人静かに……か、ううむ、これはこれで寂しいな。クロベエはいるけれど、やっぱりこう、異世界物といったら可愛いヒロインが必要じゃんね。女神の乱入があったせいなんだろうなあ、なんだか人恋しくなっちまった。
うん、ヒロインのぬくもりは無理だけど、せめて温かみに溢れた木造家屋を作ろう……いやそうじゃねえって、そういう温かみじゃねえだろって自分でもわかってんだけどさ、せめて木からぬくもりを得たい……。
家は木造家屋でいいとして、次はそいつを護る仕組みだな。でもなー、頑丈な壁やら柵やらで囲むのも息が詰まりそうだからなあ。この周辺には雑魚しかいないとパンちゃんも言っていたし、敷地の周辺に空堀でも掘っとくくらいにしようかな? いざって時はクロベエをけしかければいいし、なんならスマホぶち当てたらバーンだしな。
12畳前後のワンルームなのでちゃっちゃか設計図という名の絵をかいてしまう。簡単な窓を2か所に設置して玄関にはドアをつけてと……屋根はどうすっかな? 雪降るかもしんねえし、とりあえず適当に三角でいいかな。
「よし! こんなもんか!」
アプリを立ち上げ【建造】を押す。『設計図取り込み』をタップすると予想通りカメラが起動した。そうだろうなって思ってたけど、ほんとカメラありきのアプリだなこれ。
「これで設計図を読み込んでっと」
「そうそう、その後は『クラフト』をタップね」
そう言えば生体取扱説明書としてパンちゃんを呼び出してたんだった。横からああでもないこうでもないと説明がうるせえな。やっぱこいつ教えたがり属性持ちだったようだな。
「うんうん、場所をロックしたら『建造開始』を押してね」
「はいはい…あれ? 資材不足って出たぞ」
「うぷぷー はい! その通り! 材料が足らないんですね! 材料はアイテムボックスから自動供給されるから、あらかじめ収納しておく必要があるのよ。無から作り出せると思った? ざんねーん! あ! 私ならできるわよ? 女神様ですし!」
「うぜーーーーー! 知ってるなら初めから言えよなー!」
「失敗しないと覚えないでしょ?」
ぐぬぬ……確かにその通りなのだが、これくらいなら最初に言ってくれればそれで済むだろうに……つか、それぜってー言いたかっただけだよね。痛くなければ――てなノリでさあ。
たりねーぞと指定されているのは木材で、OKサインが出ていたのはガラスの素材となるらしい石と岩塩だった。
なんでガラスに岩塩なのか気になってググってみたが、なるほどガラスを作る過程で岩塩を元に生成される成分が用いられるようだ。
素材の素材を作るためにどうのこうのって事みたいだけど、化学的なあれこれはツールがやってくれるんだろうな。化学者でも錬金術師でも無い俺にはその手の作業は無理ゲーだ。wikiの説明を見ても殆ど頭に入らなかったもん。ほんとツール様々だわ。
「そうだ木材っていうけど建材は色々あるじゃん。そういうのも何とかしてくれるの?」
「んなわけないじゃないの。杉で作った木造家屋を建てたいなら杉を手に入れないとだめよ」
「さすがにそこまで雑じゃないか……ところで杉ってこの世界にもあるの?」
「そのものは無いけど、似たようなのはあるわよ。防虫効果に優れているし家の素材として適してるわね」
良いこと聞いた……が、いくら『似たようなもの』と言っても、スギそのまんまとは限らないよな。最悪、目の前に生えてても気づかないかもしれないわけだ。
となれば……。
「なあなあ、女神様。この世界の事に一番詳しいのはきっと貴方様なのでしょうね」
「うん? そうね。なんたってこの世界は私が作ったんだもの!」
当然じゃないのと、すげえドヤ顔してますわ。ここまですげえドヤ顔見たの初めてですわ。
「流石女神様ですわ! サスメガ! サスメガ!」
「ふふん! 我女神ぞ!」
「そんな女神様にガイドして貰えたら心強いなあって。スギっぽいアレのとこまで連れてってくれたら嬉しいなあって思うんですけどー」
「うーん。あんまりねー、
「そこをなんとか。ほら、干渉っていうのはアレじゃないっすか。神が王様になって民を導くとか、なんなら教祖様になって宗教ワールド形成しちゃうとか、そんなレベルじゃないっすか」
「そうかな……そうかも……?」
「それに比べたら、原住民ですらないゲストの俺を手伝う事なんて些細な事だし、そもそももうとっくに間接的にがっつり干渉してるじゃないっすか。それで上の人から何か言われました?」
「ううん……何も。外から協力者を連れてくるのも良くあることだって言ってたし、良く決断したねってむしろ褒められちゃった」
「おお、じゃあじゃあ上司公認じゃないっすか。多少の干渉は許されるってことになるじゃないっすか」
「そうね? そうだわ! うん、そうよ。ブーちゃんだって自分の世界で遊んでるみたいだし、私がここでユウくん手伝うのだって遊ぶようなもんだもんね」
「そうそう、そういうこと! じゃじゃじゃじゃあさ、改めて聞くけど、手伝ってくれるかな?」
「いいともー!」
ちょっれええええええええええ! めっちゃちょれええええええ!
こいつ土下座したら何でもしてくれそう……いや、ちょっと心配になってくるレベルだわ。大丈夫? 変な人についてって絵とかツボとか買わされたりしてないよね……?
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