第16話 建造ツールその1
砕石を手に入れたぞー! ってことで、明日解禁予定の【建造ツール】に備えてさっさと基礎工事を進めていこうじゃないか。
家の敷地用としては贅沢すぎるほどに広く開拓してしまってるけど……最初はとりあえず12畳くらいのワンルームを建てようかなって思うんだ。広い家には憧れがあるけれど、いきなりデケーの建てようとして失敗するのも悲しいからな。まずはお試しってことでね。
つーわけで、建造予定地を【締固】でちゃっちゃか締め固めていく。広さは多めに40㎡ほどで良いかな? 最初のおうちは八畳一間くらいのもんだけど、どうせすぐに増築したくなるだろうからな。
【切土】と同じ感じで指を滑らせるとスイスイと地面が固く均されていく。切土だけでも見た目上は綺麗だったけど、あれだけじゃ地面がふわっふわなままだかんな。
ピシーっと均されていくのが楽しくって、ついついやりすぎそうになるが、ここはぐっとこらえておく。
建造予定地を均したら、今度は森に続く道もちょこっと均してっと……そうだ、砕石も入れないと。ぬかるんだ道は最悪だからな。
地面に手をかざし、砕石出て来いと念じてみれば、予想通りズワワっと出てくる。なんだこれおもすれ。わざわざアプリ内のボタン押さなくても色々できるじゃんな。もっと早く言えよな。
手からズワワっと砕石を出しつつ、画面をタップしてどんどん締め固めていく。
……夢中になってやってたらあっという間に終わってしまった。これでアスファルト舗装程じゃあないけれど、雨が降っても歩きやすい道になった……と思う。
なんだか頑張りすぎてもうやることが無くなっちまった! ツールの力ってすげー! 後は明日解放される建造クラフトで本格的に家づくりを残すのみだ。
うっし、今日は早く寝て明日に備えるぞい!
……なんだかわくわくしすぎて寝付けねえ。
だって、家ですよ家! 一国一城の主! しかも自作だぞ! 自作! 立派な秘密基地作るの……夢だったんだよなあ。簡単なのなら子供のころに友達と一緒に作ったことあるんだ。山の斜面に穴を掘って作ったりさあ……竹藪に段ボールを持ち込んで作ったこともあったっなあ……そうそう、大くんと行ったあの廃屋まだあるのかなあ……カズくんがエロ本を隠した橋の下の……
……
…
……おはようございます。ユウですけれども。昨夜は色々と過去の思い出に浸ってしまって結局夜更かししてしまいましたわ。寝る前にあれこれ考えるのってダメらしいね。脳が興奮状態になって寝られなくなるとかなんとか……。
なので、先ほどパチリと目を開けた時、感覚的に寝坊したなー、もう11時近いんだろうなーってスマホの時計を見たらまだ9時前ですよ。
びっくりしたわ。
だって身体が驚くほど軽いんだぜ? これって9時間くらいがっつり寝ちまった時のコンディションじゃん。最後にスマホの時計を見たとき4時くらいだったからさ、多目に見積もっても4時間ちょいしか寝れてねーってのに、この元気さよ。
こっちきて健康的な生活を送ってるから多少鍛えられて肉体年齢が若返っているのかもしれんな。つってもまだ4日目だけど。
軽く朝の体操をしてしゃっきりしたらSNSを開いてニュースを見る。別に健康やら世間やらに興味があるわけじゃねーんだけどね。出勤前に目を覚ますためにやってたら癖になったんですわ。
スマホ触ったついでにアプリを立ち上げて確認してみると、きちんと建造ツールが完成していた。よっしゃ予定通り家を建てられそうだな。
そのまま製作ツールのクラフトをセットしてスマホを充電しておく。今日はなんとか家を建てて、明日は狩りの日にしないと魔石の残量がやべーな。
うーし、あんまり時間に余裕がないぞい! スローライフ、スローライフってなんだ! ……とにかくちゃっちゃか事を進めよう。
手早く顔を洗い、朝食を取る。朝から肉もいけそうだったが、俺の中に燻る日常が『普通の朝食っぽいの食いてえ』と囁いたので、クロベエがどっか行っていねー事だしログボメシで賄うことにした。
そう、チーズ味やフルーツ味などがあるあれですわ。パンの代わりってわけじゃあないけど、これはこれでそこそこ旨いからな……うぐ、のどに詰まるなこれ……はあ、お水美味し……けど、やっぱ朝はコーヒーかお茶を飲みてえところだな。コーヒーはともかくお茶ならそこらの野草で何とか代用できそうだが、問題は湯を沸かす道具だよなあ。
シャキサクゴクゴクと食事を済ませ、さっそく建造ツールについて女神に聞くことにした。何時ものように呼びかけたらメッセが来るんだろうが……あれはちょっとめんどうだ。
「あ、いちいちメッセ読むのも怠いのでちょっとこっち来て下さい」
誰に言うでも無く、独り言の様に呟くと。
「そうホイホイ降りてくるわけにもいかないのですよ……神は忙しいのですから……」
とかなんとか言いつつ降りてくるあたりチョロい。肉を焼くたび降りてきそうな感じすらあるね。つーかぜってー暇だよね、こいつ。
「まあまあ、ヘルプ読むより現役廃プレイヤーから聞いた方がわかりやすい事ってあるじゃないですか。そんな感じのアレってことで」
まったくもう! と、口では言っていたが、教えたがり属性を持っているのか、文句の割には嬉しそうな顔をしている。扱いを誤るとめんどくさいタイプのアレですな。
「いいですか、建造ツールは大型クラフトをするためのものです。建物や大規模な道具、またはそれらに使う大きめの素材の加工などに使用します。一口に建造と言っても色々有りますが……例えば家をレンガの壁で囲みたい、そういった作業もこれで範囲指定をすれば一発です。レンガが既に積んである状態で、つまり壁の状態で設置されます」
「すげえ! ちまちまちまちまやらなくて良いですね!」
「建造ですからね。自動で有るべき姿に構築してくれるんです。家もそうですよ? 想像してみて下さい。柱を作って、壁材を作って、屋根を作って、ドアや窓も作ってーとクラフト機能で作られた部品を前にしてどうですか? 組み立てられますか?」
「無理っすね! ほぼ一人でログハウス作るエッセイ漫画を読んだことがありますが、彼は重機を使ってましたし! なんたって俺にはそんな器用なスキルも無いし知識もないっすからね! スマホでググったところで家はできませんわ!」
がははと笑うとパンちゃんは疲れた顔をして続ける。
「はい、そうですよね。なので建造ツールという機能にしました。開拓ツールと操作は大体同じ。範囲を指定して作りたい物の名前を入力するだけです」
「例えば例えば! ”全面ガラスの家にしてほしい!”なんてドリームを匠に伝えてハウスにして貰うにはどうすればいいのですか!?」
「匠て。頭で考えたとおり建造して貰える、と思っていただければ間違い無いのですが、うーん……貴方の事だからどうせ邪念が入って酷いことになりそうですよね……」
「おい!」
「普通の家を建てるぞー! とクラフトしてる最中に変な妄想が始まって巨大ロボットができちゃったらどうします?」
「熱いなそれは!」
「住めませんからね? ロボットには住めないの!」
「いやでもさ、昔読んだ漫画でスポーツカーに住んでる家族のネタが出てきてさ……それを考えればコクピット内でもどうにかすれば……」
「あ、だめだこいつ絶対やらかすわ。はい! 決まり! 追加機能をインストールしますね! ロボに住んじゃダメ! 住むのはちゃんと設計した普通のおうちにしなさい!」
「ぇー」
「ぇーじゃないの!」
適当にパンちゃんを弄って遊んでいたが、我慢の限界が訪れたようだ。もう強引に話をすすめちゃるとばかりにスマホに手をかざすと、暖かな光が一瞬スマホを包み込む。
「はいできた! そしてはいこれ!」
どんな機能が追加されたのかなって思ったら、ノートと筆記用具を手渡されてしまった。なんぞこれ。
「なんすかこれ? 自由研究でもやれっていうの?」
「ちーがーいーまーすー! 残念な貴方のためになあ、女神さんがなあ、お絵かきしたとおりクラフトする機能をなあ、追加してあげたんじゃーーー」
「何処の年末番組だよお前は。つか、そのノリが素だよね? つーかさ、疲れるしもう気取って喋るのやめね?」
「あーもう……管理神にも色々と都合があるってのに……まあいいわ。それでさ、話を戻すけどね? 貴方って大したスキルが無いって言ってるけど、お絵かきはまあまあ出来るじゃん」
「おいくそ、なぜそれを知っている」
「神の力で貴方のSNSを特定してHNでエゴサした」
「悪魔かよ!」
「いいえ、女神です。君ってお絵かきSNSやってるんだねー。絵柄が結構好みだったからさ、ブクマしてマイペコ申請しといたから!」
「うおおおおおお! うおおおお! あっ……ほんとだ……初期アイコンから申請来てる……ブロック」
「おい! まあいいわ……とにかくあのくらい描けるなら大丈夫よ。作りたい物の絵を書いてスマホのカメラで読み込ませたら良いわ。暇だったら細かく書いたりいろいろな角度で書いたりしても良いけど、ある程度は補完してくれるからそこまでこだわらなくても良いわよ。あとブロック解除しておいてね」
「へえ、家具なんかの絵を含めて書いたらどうなるんですかね? 解除しません」
「それは家だけになるわね。家具や日用品なんかは製作ツールの領分だから、アンロックされてない今は書くだけ無駄よ。ま、製作ツールがあれば植物などからスパイスを作るなんて事も出来るようになるから、明日ツールのクラフトが完了すれば色々捗るようになるわね……ねえ、お願い解除して……漫画の続きが……WEBでしか読めないのがあるとか知らなかったし……お願い……」
「あれだなー、取りあえず自分の分をスマホでホイホイ作っちまって、将来的に人と接触した時にゃあ、作ったの見せたり食わしたりして研究させる感じかなあ。原住民がどのくらいのレベルで生活してるか知らないけど、きっと大変なんだろうな……俺が教えられる範囲にも限度があるしなー」
「ま、当分は自分の生活だけ考えて良いわよ。お願いしておいて言うのもなんだけどさ、あんまりお仕事って感じでやらなくていいからね。無理がない範囲で好きなようにのんびりやってくれていいから」
「ありがたい話だね。元々バカンスのつもりだし、それに甘えて適当にやらせてもらうよ」
「うん、そのくらいの気持ちでいいわ。そ、それで……ブロックは……」
……普通に作品を気に入ってくれてるみたいなので解除しておいてあげた。
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