鳳凰院翡翠
それはまたしても不思議な空間だった。
「あぁ……やっと、やっと会えたわ。私の愛おしい人、私と娘が愛する大切な人」
彼女が……鳳凰院翡翠が俺に抱き着いていた。
まるで以前の夢の焼き直しのような感覚ではあるものの、今目の前に居るのは白雪ではなく翡翠……白雪の母だ。
白雪と同じくらいの長さで漆黒の髪が垂れ下がり、それはまるで狙ったかのように彼女の豊満な胸元の先端を隠している。
「……鳳凰院さん?」
「あら、どうして名字で呼ぶの? 名前で良いわよ。私とあなたの仲じゃないの」
えっと……それはどういう仲なんですかね。
というか今気づいたけどまた俺は自分の体に戻っていた……あぁ恋しい、この平均的な体型が本当に恋しくて涙が出そうだ。
「泣きそうなの? ほら、私の胸で泣きなさいな。全て包み込んであげるって、以前にそう言ったでしょ?」
「……ママぁ!」
これはもうママみが凄すぎるね!
以前と同じでこれが夢だということは分かっているので、俺は翡翠を前にしたら一度は口にしたかった言葉を言ってみた。
まあ本気で彼女を母だと考えているわけではないが、それだけの包容力が彼女にはあったのだ。
「ママだなんて可愛いわねぇ。あなたは一体どれだけの嬉しい言葉をくれるの? そんなことを言われたら私、本当の息子のように愛するわよ?」
「本当の息子にこんなことはしない気もするけど……」
「他所は他所、うちはうちというものだわ。まあ厳密に言えば全く違うのだから気にすることはないでしょう」
それはまあ確かに……本当の親子でしてたらそれこそヤバい。
息子と母親の近親相姦はエロゲの世界だとメジャーではあるものの、流石に俺たちが生きるのは現実だからな。
「……それにしても最高の夢だなぁ。白雪の時も思ったけど、まさか翡翠にも会えるなんて思わなかった」
「そうね。私も夢にも思わなかったわ……だからこそ感動しているの。こんなおばさんを愛していると言ってくれたあなたのことが忘れられなくて」
「いや、おばさんだなんて……年齢はそうかもしれないけど、見た目に関しては白雪のお姉さんみたいなもんだしさ」
「あら……あらあら♪ 本当に嬉しいことを……でも減点ね」
「え?」
「年齢はそうかもしれないって言葉は要らないわ」
「あ……」
それは失礼しました。
けど……本当に高校生の娘が居るとは思えないほどの若々しさで、ゲームでも語られていたけど彼女は少し街を歩くだけで男に声を掛けられる。
見た目の若々しさだけでなく、その身に秘める男を惹き寄せるフェロモンがそれはもうあり得ないレベルで撒き散らされているせいだ。
「っ……」
だからこそなのか、そんな彼女の裸が目の前にあると俺も興奮してきてしまう。
白雪と同じでシミ一つない綺麗な肌は言うまでもなく、その暴力的なスタイルはたでさえ魅力的な肢体を持つ白雪を凌駕するほどだ。
(確か、公式設定で白雪のサイズは97……翡翠は107だっけか)
基本的にゲームにおける数字は特に意味はなく、どれだけ二人における違いを生み出し、そして誰もが抱えるエロへの渇望を刺激できるかでしかない……そういう意味では白雪と翡翠はあまりにも魅力が天元突破している。
「何を考えているの? エッチなことかしら」
「っ……」
胸の内を見透かされ、俺はドキッと心臓が高鳴った。
クスクスと肩を揺らして笑う翡翠は大人の余裕に満ち溢れており、同時に白雪を彷彿とさせる可憐さも備えていた。
「さあ、私は逃げも隠れもしないわ。基本的に私がリードすることがあちらでは多かったけれど……どうかこの体を好きにして? あなたの望むがままに貪りなさい」
それは正に俺のタガを外す言葉だった。
俺はこれが夢なのを良いことに、俺は白雪の母である翡翠の体を思う存分堪能し、そして彼女もまた途中から俺を引っ張るように愛してくれた。
「素敵……素敵だわ♪」
「……………」
事が済んだ後、俺は以前と同じようにボーっとしていた。
腕を抱くようにして身を寄せている翡翠……正直言って、もしもこれが夢でなかったらと思うと非常に恐ろしい。
俺はその思ったことを素直に彼女に口にした。
「なあ翡翠」
「何かしら?」
「……これが現実でなくて良かったと心底思うよ」
「どうして?」
「だって……夢ならこれで終わるだけ、けど現実ならこれがずっと続くことになる。こんなのが永遠に続くのだとしたら……どうにかなっちまうよ」
「なればいいじゃないの。私だけじゃない、白雪だって傍に居るのよ」
そう……もしも翡翠だけでなくここに白雪まで居たら本当に怖い。
実際、こうして彼女たちと一度繋がっただけでここまで心を揺さぶられ、他のことがどうでも良いとさえ思わせられ、しかも更にタチが悪いのがエッチな方面に関わらず、ありとあらゆる場面で彼女たちはその愛で包み込んでこようとする……それは正に奈落の愛とも言えるだろうか。
「白雪も居る……か。まあでも!」
「?」
「俺さ、ただ二人に会えただけで嬉しいんだよ。それがやっぱり一番だ」
「っ!?」
ポカンとした翡翠は徐々に頬を染め、そのまま俺から視線を逸らした。
余裕の溢れる彼女には珍しいその表情はもちろんゲームでも漫画でも見たことはなく、そういう部分でも魅力が溢れてるのかよと逆に更に戦慄した。
「と、取り敢えず明日はジムに行かないとなぁうん! 痩せねえと!」
「ジム? 明日?」
って、今は嵐じゃないんだからそんなことを気にしても仕方ねえだろ。
変に慌てたせいで全然関係のないことを口にしてしまい、翡翠は首を傾げていたがどこか名案が思い付いたような顔をしていたのは謎だ。
……とはいえ、やっぱりこうして画面越しでなければ思うことはあるんだ。
「……白雪も翡翠も、現実で見たらどれだけ魅力的なのか思い知らされる」
「それは……」
「これが夢じゃなくて、現実ならどれだけ幸せなんだろうなって」
「っ……私たちは必ず――」
そこでちょうど良く、俺は夢から覚めるのだった。
▽▼
「……っ!?」
パッと目を開けると、目の前に全裸の翡翠は居なかった。
またかよと落胆はするものの、嵐になって絶対にあり得ないことを夢で出来るだけでもありがたいと思うべきか……凄いのがまるでリアルかのように覚えており、明確に記憶に刻まれているからだ。
「……こんなんだから白雪を前にした時も緊張したんだよな」
彼女の制服の下に広がる桃源郷、それがまるで透けるかのように見えてしまうから心臓が常にバクバクしてしまうのだ。
「夢から覚めてもこの体はいつも通りだぜ」
気のせいかもしれないが、最近少しだけ体力が付いてきた……気がする。
この体になってまだ一月も経ってはいないものの、段々と体を動かして息が上がる時間が伸びたからだ。
体力が増えたのか、それとも慣れてきたのか……まあ良い傾向ではあるな。
「よし、それじゃあ早速スポーツジムに向かうとするか!」
もちろん駅前にあるスポーツジムで、そこは白雪におススメされた場所だ。
ネットで少し調べたけど数日程度の利用ならばそこまで金は掛からないし、ただでさえ少ない家族からの仕送りにそこまでダメージはないはずだ。
会員制になると総合的には安くなるんだが、流石にそれは高いからなぁ。
「行ってきま~す」
着替えも準備も終えて俺はアパートから出た。
俺以外に誰も居ない部屋だが、前世の高校生として過ごしていた頃の記憶を思い出してしまい、挨拶をするのはもはや癖になっていた。
それから俺は特に寄り道することなくジムに向かったが、建物の中に入った頃には既に汗だくだった。
「うっわ、凄い体」
「運動……出来るの?」
利用者の女性客には笑われてるけど、今に見てろよと逆に闘争心に火が付く。
(白雪は誘ってくれって言ってたけど……連絡先とか何も知らないし、何よりどんなタイミングで誘えば良いってんだよ)
いつも友達に囲まれている彼女に近づくタイミングなんてありはしない、だから言ってくれと言われても誘うことなんて俺には出来ない。
「えっと窓口は……」
ちなみに前世でジムに通った経験はないのでちょっと緊張している。
ドキドキする感覚で窓口に向かう中、背後から俺は突然声を掛けられた。
「こんにちは」
「……え?」
振り向いた俺は間違いなく間抜けな顔をしたことだろう。
同時に心臓が大きく高鳴り、今朝に見た夢を幻視するほどに色濃く記憶が蘇った。
「まるで初めてみたいな雰囲気を感じたのよ。それで少しおせっかいでもどうかしらと思ってね」
「……………」
何故ここに彼女が……鳳凰院翡翠がここに居るんだ!?
全ての人間を安心させるような笑みを携えた女性、翡翠がそこに立って俺をジッと見つめていたのだ。
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