最終話 最強の殺し屋がヤンデレ女に好かれちゃった!?

 長い長い長すぎる廊下と階段を上がり続け、そのドアの前にたどり着く。そして、俺は元気よくその扉を開けた。


「はいおはよう!みんな!」


 俺がそう叫ぶや否や、その部屋にいる子供たちは全員俺の方へ視線を向ける。そして


「おはようございます!先生!」


 なぜ俺が先生と呼ばれてるかって?あの小百合との一件が終わり、俺は殺し屋をやめた。真っ当な人生を生きようと思ったのだ。でもまともな教育を受けてこなかっだ俺は学歴はゴミ同然。仕事なんて見つからなかったのだ。そんな時に俺を拾ってくれたのはこの学校の校長。勉強できない俺が先生なんてあり得ないとは思うが、ここは普通の学校では無い。この学校は護衛の育成学校なのだ。ここの学園長は俺の実力の高さを買ってくれたのだ。いやはや、感謝してもしきれないな。


 俺は元気よく挨拶を返してくれたみんなを見据えていると、1人の生徒が俺の前に出てきた。学級委員長だ。


「先生!みんなから先生に伝えたいことがあります!」


 そして、みんなが立ち上がった。何が起こるのかわからず思わず身構えてしまう。そして、次の瞬間教室の後ろから誰かが入ってきた。そして、それを見て俺は唖然としてしまう。


「え?零?」


 そう、教室の後ろから入ってきた人物は、二階堂零だった。いや、もう二階堂ではなく……


「先生!結婚おめでとうございます!!」


 そう、零の苗字は二階堂ではなく蘭になるのだ。つまり、俺たちは結婚すると言うことなのだ。俺は花束を渡してくれる生徒を見ると、俺のことなのに自分のことのように喜んでくれている様子を確認できる。そのことが嬉しくて俺は


「ちょ、先生泣かないでくださいよ!!」


「だって嬉しいんだもん……うぅ……。」


 そんな涙を流し始める俺の目の前に、今度は俺のお嫁さんになる零がやってきた。そして呆れた様子で言った。


「一縷ってあれから泣き虫になったよね……。」


「うるさいやい!俺だって元々はこんな人間なんだい!!」


 もう教師としての威厳とか無いも同然。まぁ、正直生徒たちには同格に見てもらったほうが接しやすいし楽しい。そうして俺たちが喜びに浸っていると、また教室に誰かが入ってきた。


「おめでとう〜!!」


「おめでとうございます蘭さん!!」


「おめでたいわね。」


 入ってきた3人組は柊小百合、柊紫苑、柊香純の姉妹三銃士だった。あの一見以来、この3人は仲直りをして3人で姉妹として仲良く暮らし始めた。俺もそれで良かったと思っている。仲直りっていうのは素晴らしく、姉妹愛を見せつけられた時には俺も涙したものだ。


「ほほほ。おめでたいのう蘭くん。」


「が、学園長も……。」


 学園長まで俺の結婚を祝いに来て、少しだけ困惑する。


「わざわざありがとうございます。」


 俺は深々と頭を下げた。すると学園長は笑いながら


「かしこまらなくても良いと言っておるだろう?………それと、入りたいなら入ってくれば良いものを……」


 学園長がそう言ったので、俺はドアを向こうを見る。そこには護衛の時のリーダーであるフェイドがいた。どうしてこんなにも全員が集合しているのかというと、ここにいる全員、この学校の教師なのだ。零は護衛の指導とかはしないで事務係だが、他の奴らは全員戦闘能力が高いため、護衛の指導をしている。


「妬ましいですね。私は未だに結婚できてないというのに。やっぱりあの時早くに殺しておくべきでしたね。」


「おい空気をぶち壊すなよ。今は俺のお祝いムードなんだ。雰囲気を壊すような奴は退散退散!!」


「いつか私も可愛くて頼りになるお嫁さんを作って見返して見せますからね!」


 フェイドはそう言って出て行った。フェイドはあの後事情を話し、なぜか伊集院家の当主である貞明さんから許しをもらい、妹の治療費を払ってもらったらしい。その件で完全に伊集院家に忠誠を誓ったとかなんとか。でも、それで良かったと思う。なんやかんやあいつと苦労していたらしいしな。


 そうして俺たちのいつもの日常が始まった。護衛についての授業をして、座学は他の先生がやって、学校が終わると零と一緒に家に帰ってご飯を食べる。そして、その毎日の繰り返し。休日はたまにデートをしたりしている。本当に平和になり、本当に充実していた。


「零。」


 俺は隣に肩を並べて歩く零に話しかけた。


「どしたの?急に。」


「ありがとう。」


 このありがとうには色々な意味が込められていた。俺を許してくれてありがとうや、俺を好きでいてくれてありがとう。そして、こんな俺を幸せにしてくれてありがとう。この俺の言葉を聞いた零は微笑んで言った。


「どういたしまして!………あ、でも他の女とベタベタしたら許さないからね?」


「も、もちろんだとも……。」


 あいも変わらずヤンデレの抜けていない零に苦笑をしてしまうが、それもそれで良いだろう。俺は零と結婚したのだ。他の女とベタベタするなんて言語両断。あり得ないのだ。だから零のヤンデレが悪化するなんてことはもう無いはずだ。


 ふと空を見上げると、まるで俺たちの結婚を祝福してくれているかのような、雲一つない快晴だった。


 俺たちの物語は結婚して終わるのでは無い。始まるのだ。結婚して終わりの人生なんて悲しすぎるだろう?だから俺は、もし俺たちを見ている人たちがいるのなら、しっかりと物語になるような、そんな充実した毎日を過ごそうと思う。

 

 だって、俺たちの幸せは始まったばかりなのだから。




 

 これにて本編完結です!!11万文字も読んでいただきありがとうございます!!番外編は気が向いたら書こうと思います!!

 

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