38話 最強の殺し屋がブチギレ!?
「お前を殺すことなんだからよ。」
俺はそう言葉を放ち、さらに首を絞める力を強めた。俺の目的は三つある。そのうちの一つが二階堂零という女を守ること。そして二つ目がこれ。古着京というゴミをこの世から消すこと。そして、それが今叶いそうになっていて、俺は狂気的な笑みを浮かべた。
「おま……え……いつの……間……に。」
苦しそうな様子でなんとか言葉を絞り出す古着京。その様子を見て俺はほくそ笑む。俺は元々零が連れ去られたことで我を忘れそうなほどに怒りを覚えた。だが、そんなブチギレ中にこいつは現れた。キレていなかったらこんなすぐに飛びかかるということにはならなかったと思う。だが、タイミングが悪かった。イラついていた俺はこいつを見て怒りを制御できなくなってしまったというわけだ。言わばブチギレでは無く、超ブチギレと言ったところか。
「昔とは立場が逆転したが……どうだ?玩具だと思っていたやつに殺されかける気分は。」
「………がっ……最……悪…だ。」
こいつは確かに昔は俺なんかよりも強かった。俺を捩じ伏せることができるくらいには。でも、場所が悪かったのだ。俺とこいつが生きていた場所では殺しや暴力に加え盗みなども頻繁に行われていた。そんな中で、運の良い人間は修羅場をくぐり抜けて強くなることができる。当時のこいつも、そして今の俺もそういうわけだ。あの場所は強くなるために経験値を積める場所が星の数ほどあった。
「お前は知らないかもしれないが、俺は前世界最強の殺し屋って呼ばれた男だぞ?それに、ここにいる俺以外の2人もお前なんかよりもよっぽど強い。お前がここに来た時点で死ぬ運命は確定してたんだよ。」
このままいけばこいつは確実に死ぬ。だから俺は握力をさらに込めて首を締め上げようとして、瞬間、古着京は俺の腕を掴むのをやめて最後の力を振り絞って俺に攻撃をしてきた。その攻撃は、昔俺以上に強かったこともあるせいか、無視することのできない威力だった。瞬間的に俺は首から手を離してその攻撃を回避した。
「ガハッ…ゴホッ……。」
古着京はしばらくむせてからゆっくりと立ち上がり、俺と視線を合わせた。
「死ぬかと思ったぜ………お前はいつの間にそんなに強くなったんだ?」
「……さあ、どうだろうな。少なくともお前に教えるようなことでは無い。お前は今から死ぬんだからな。」
再び俺は攻撃する準備をして、古着京は構えた。こいつは多分腐っても強者の部類に入るだろう。それに、こいつの場合は何をしてくるかわかったもんじゃ無い。手を抜けば死ぬ可能性だってあり得る。
そうして、俺たちは再び激突した。が、実力差は明白だった。俺にとって、世界最強と呼ばれたことのある俺にとって、古着京という男はあまりにも弱すぎたのだ。遅すぎるスピードで飛んでくる拳を当たり前のように避け、俺はカウンターでストレートをぶちかます。
「ガァッ……!」
古着京は呻き、数メートル吹っ飛んでいく。そして、俺はそいつの方へゆっくりと歩を進めていく。意外にも怒りはかなり収まり、冷静な思考を取り戻していた。ここは元の組織だ。ここで死体が生まれたとしても掃除屋が勝手に処理をしてくれる。つまり、俺は何も気にすることなくこいつを殺すことができるというわけだ。
蹲る古着京の目の前まで行き、俺はナイフを首につけつける。今すぐにでも殺してやりたいが、聞かなければいけないこともある。だから俺は衝動を抑えて質問を繰り出すことにした。
「零はどこにいる。」
「………知るか。」
こいつはシラを切ったので、俺はこいつの手の甲にナイフを突き立てた。
「うぐ……」
こいつはあの場所では強かったせいか、痛みに耐性がない。こういうことをされる機会が無かったのだろう。それがこいつの弱点でもある。それからはいろいろなことを聞いた。零の居場所はもちろん、小百合となぜ手を組んだのかや、なぜこの組織にいるのかなど。でも、こいつは一向に口を割らなかった。その間俺は、ナイフを突き立てた場所をさらに抉ったり爪を剥いだりしたりして更なる苦痛を与えていた。
「こんな程度耐えれないで良くもまあ俺を殺そうとしたな。」
既に口を聞ける状況では無いほどこいつはボロボロだった。内心でくたばるのが早いと思い舌打ちをしつつ、俺はさらにナイフを突き立てようとした時、そいつはやっと情報を喋り出した。
「話す……から。……もうやめて……くれ。」
俺は振り上げていたナイフを下ろし、紡がれる言葉を聞こうとした。そして、そいつが話し出そうとした、その瞬間だった。前の方から発砲音が聞こえ、気づけば俺の目の前には血溜まりができていた。少しだけ驚愕しながらも俺は前を見据えた。前にいたのは小百合だった。
「悪いわね。殺したかったでしょうけど、生憎と情報を渡されるわけにはいかないのよ。だから私が殺させてもらったわ。」
そう言いながら小百合はゆっくりと近づいてくるが、なぜかその目に殺意はなかった。
それにしても、あんなにも自分で殺したかったのに、一旦冷静になることができたからか、案外古着京が殺されたという事実を受け貯めることができた。
「……あんたはまだ殺さないわ。あの女をとことん利用してから殺すわ。あんたを殺したらあの女の利用価値が無くなるからね。」
「……そんじゃ俺はまだ生きれるってことで良いのか?」
「そう捉えてもやっても構わないわよ?それで……」
その言葉後に、小百合は後ろにいる2人に視線を向けた。紫苑と香純だ。無論その2人は警戒をしている。
「久しぶりね、私の落ちこぼれの妹と裏切り者さん?えっと……別に私はあんたたちを殺したいわけじゃ無いから、また組織に戻ってくるっていうのなら殺さないでいても構わないわよ?」
その言葉に俺は笑ってしまった。
「おいおい。俺だけ殺そうとするなんてひどく無いか?そんなに俺が嫌いたのかよ。」
「いいえ?別に贔屓してるとかそういうわけでは無いのよ?そこにいる出来損ないと裏切り者さんは組織のルールに反いたわけでは無いもの。ただ逃げただけでね。でもあんたは違う。ルールに反いた。だから殺されなければならない。まぁ今はまだ殺さないけどね。」
その状況を見て、俺はため息を心で吐く。状況は絶望的だ。古着京だけなら余裕だったが、小百合が出てきてしまったら変に動けない。それに、ここで俺が抵抗したら零の身に何か起きてしまうかもしれない。だったら今は言いなりにしたほうが良い気がする。
「……別に俺を捕らえても良いが……零に合わせてくれ。あいつが心配だ。」
「ふふ。ほんっとうにあんたは依存してるわね。ま、別に良いわよ。あんたがいなきゃあの女の価値が無くなるしね。」
「………零には手出しさせないぞ。」
「あぁ、安心してちょうだい。変に抵抗したら2人とも殺すから。それと、後ろの2人にもとりあえず来てもらうわよ。殺すわけじゃないからくつろいでくれても構わないわよ?」
そうして、紫苑と香純の2人は小百合が呼んだ使用人に連れていかれ、俺は小百合に連行されるのだった。とりあえずは零の無事を祈るしかない。
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