33話 最強の殺し屋 引っ越す
柊小百合とか言うテロじみた女に家の場所がおそらくバレているということで、俺と零は引っ越していた。隣街ということもあり、トラックですぐに到着した。俺の性格上家具は必要最低限しか置かないので、業者の人も楽そうに仕事をしていた。道中で零との関係を聞かれたので、従兄弟ですって答えようとしたら零が恋人ですとか答えやがった。俺は零と付き合うつもりなんて一ミリも無いんだけどな。
そうして新たな家にやってきた。広いわけでもなく、少し狭い。だが、これくらいで丁度良い。広いと掃除が大変だし、狭すぎると部屋が少ない。だから俺は二部屋だけ個室のある家を選んだ。少しだけ繁華街から外れたところに位置している家なので、すぐには探し出される心配はないだろう。
「うぅ〜。」
あの悪夢を見た日から、零は体調を崩してしまい、熱が出ていて辛そうにしている。俺はつきっきりで看病しているのだが、おやすみのキスをしてほしいと1日に50回くらい頼まれる。俺だって男だ。女の子とキスくらいしてみたい。でも、だめだ。ここで零キスをしてしまったら俺は戻れなくなる。零を俺から卒業させるどころか、俺が依存してしまう可能性も出てきてしまう。それだけは本当にあってはならないのだ。
「ほら、平気か?」
俺はそう言ってさっき買ったゼリーを手渡す。風邪の時は変に食べ物を口に入れたくない時が多いと聞くため、俺は口に入れやすいゼリーを選んだ。零も喜んでいたので品選びには失敗しなかったらしい。
「一縷〜。膝枕して〜。」
「そんなこと言ってねぇで寝ろ。」
「やだ〜。おやすみのキs」
「早く寝ろって言ってんだろ。はいおやすみ。また明日な。」
そうして俺は零の部屋から出て自室に向かう。引っ越しにも手続きとか色々あり、気がつけば夜である。零は体調が優れないのでゼリーで済ませていたが、俺は飯を食っていないし体調は万全だ。何を食べようか悩みながら冷蔵庫を開けると、ものの見事にからだった。
「………出前とるか。」
それだけ呟き、俺は出前サイトを開こうとして、電話がかかってきた。香純からだった。こんな時間に一体何用かと思い、少しだけ不安に思いつつも電話に出る。
「やっほ〜。今私家の前にいるから。開けてね。」
「………は?」
直後、インターホンが鳴り響く。俺は急いでカメラのほうに行き、マイクをオンにする。
「まじお前何やってんの?」
「暇だから遊びに来た!」
何が暇だから遊びに来た!だよ。今この家には零がいる。そんな状況で女を家に入れたらどうなるだろうか。新たな修羅場の出来上がりである。つまり、俺はこいつを家に入れるわけには行かないのだ。
「今忙しいからまた今度な。おやすみ〜。」
そう言ってマイク越しの通話を切り、出前のサイトをまた覗こうとして、インターホンが鳴った。いやほんとになんなん?マジやめて(泣)
「……いやほんとに何?マジでやめて。」
「だって暇なんだもん!」
俺は通話を切った。そして、鳴り響くインターホン。俺は急いで玄関に向かってドアを開けた。
「頼むからやめてくれ!今は零が家にいるし寝てるんだ!迷惑になるとか考えないのかお前は!」
「逆に聞くけど考えてると思ってるの?」
「………全く。」
「そういうことだよっ!」
そうしてずかずかと家に入り込んでくる香純。おいやめろそれ以上家に入ると命が危ないぞ。と言いたかった。だが、手遅れだった。
「……ねぇ一縷。この女……なんで家にいるの?」
リビングにすでに零がいた。香純はニヤニヤしながらこっちを見ている。ニヤニヤしてないで助けろよという文句は思い付かず、俺の中に焦燥感が充満し始める。最近は女と関わることがあったと来ても仕事上だし深くは関わっていなかった。だが、家にいるのを見られたらどうなる?
「………勝手に入ってきただけだ。」
すると、途端にニヤニヤし始める香純。俺はその笑みを知っている。それは何かを企んでいる目だ。首筋に汗が伝う。
「あんなに家に来て欲しいって頼んでたのに〜?冷たくない?」
「おい誤解を招くようなことを言うな。」
あ〜ダメだ。零からの視線が冷たいし、なんなら香純へ対しての視線の方がやばい殺意感じる。
「そもそもとして俺はそんなことを言ってない。香純も変なこと言ってねぇで帰れ。」
「……そうよ。ここは私と一縷の愛の巣なの。」
「お前もお前で変なことを言うな。」
「ヒューヒュー。暑いねぇお二人さん!」
こっちはこっちで誤解してるし。もう本当に面倒くさい。こいつらは変なことしか言わないし、しかも勘違いするしタチが悪すぎる。いやほんと、家に入ってくるのだけはやめて欲しかった……。
「………ねぇ一縷。あの女殺して良い?」
急に物騒すぎることを聞いてくる零に対して、俺はこう答えた。
「殺すのはダメだがコテンパンにするくらいなら構わないぞ。あとついでに家から追い出してくれ。」
急ににっこりとする零。すでに何をするのかは決めてあるようだ。恐ろしい。
「わかった!じゃあちょっと痛い目に合わせてくるね!」
「ほどほどにな。」
軽い足取りで恐ろしいことをしに行く零の後ろ姿を見ながら一言そう呟き、俺は今後についてを考え始めるのだった。あれ?零って体調不良だったよな?
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