25話 最強の殺し屋が優勢に
香純が助けに来てくれたことで、思いもよらぬ速さで優勢への道を辿っていく俺たち。そして、今は先頭は俺と香純。後ろにはボイスレコーダーを持った神楽がいた。そのボイスレコーダーをさっき聞いたのだが、証拠として順番過ぎる音声が録音されていた。
『このままいけば蘭一縷を殺せる。フェイド。あなたが大金を手にする日も近いかもね。』
『そうですね。何としてでもあの男を殺さなければなりません。まぁ、そのために色々と準備してきましたからね。貞明様が体調不良になるとは思いもしませんでしたが、結果的に平気ですね。』
『そうね。私としても蘭一縷を殺すという任務を達成できるし、あんたの目的も果たせるから一石二鳥よね。案外簡単に嵌ってくれて助かったわ。』
という証拠すぎる証拠を香純は録音してくれた。香純に対してここまでの感謝を覚えたのは初めてかもしれない。と、そんなことを思っていると、前の方から人の気配がした。咄嗟に俺たちは気配を隠し、階段の曲がり角に身を隠す。そいつは長い長い廊下を進んでいるので、恐らくここを通るだろう。大きな声を出されないように仕留めなければいけない。そうと思っていると、そいつが姿を表した。警備員だった。俺はそいつが声を出すまでの時間を与えずに、もはや認識すらされていないかのようなスピードで、そいつの首に手刀を打ち込み、気絶をさせる。
「……本当に化け物みたいなスピード……」
「あんたってこんなに強かったんだ……」
神楽も香純もあっけに取られていた。が、そんなことはどうでも良く、紫苑とフェイドがいる所まで早くに行かなければならない。
そうして俺たちは早くその部屋に辿り着くべく、早足に長い長い廊下や階段を突き進むのだった。道中の警備員は全て香純か俺が秒で無力化した。本当に弱すぎていざという時に頼りにならなそうなやつばかりだった。
長い間歩き続け。俺たちはその部屋の前までやってきていた。一応気配は隠していたが、何かの異変に勘付かれている可能性もある。だが、そんなのは今更な話だ。ここまで来たのだったら事実を突きつけて無罪を確定させる。そして、フェイドはどうなるかは知らないが、紫苑には元の組織について根掘り葉掘り詳しく話してもらおう。
そうして俺たちはその扉の前で互いに顔を合わせ、頷きあい、そしてその扉を勢いよく開けた。俺たちが脱走して暴れていることをてっきり知られていると思ったのだが、そんなことはなかったらしい。フェイドも紫苑も面食らったかのような顔をしていた。
「………なぜあなたがここに……?」
「か、神楽様!?しかも蘭も……それにあなたは誰なんですか!?」
誰なのですか?とは香純に向けて放たれた言葉だろう。そして、取り乱す2人。だから俺はその2人に向けて嘲笑するような笑みを浮かべた。そして、言った。
「2人ともありがとな。俺をまんまと嵌めてくれたり拷問してくれたりな。まぁ、任務上俺を殺さなきゃならないんだろ?だったら今度は本気で相手してやるよ。生憎と今の俺はやる気に満ち溢れていてな。女だからとか自分より弱いからとか、そんな理由で手加減できる気がしねぇんだよ。」
そして、その瞬間神楽はボイスレコーダーを流した。それにはさっき聞いたような、俺の無実を決定づけるような事実が発言されていた。その音声を聞き、紫苑とフェイドは焦燥していた。自分たちの予想通りになり、勝ちを確信していたのだろう。そして、慢心をした。死亡フラグでも立ててたんじゃないか?と思ってしまうほど綺麗な逆転だ。
「フェイドに紫苑さん。あなたたちは主人である私やお父様を裏切ったのも同然です。だから私はこのことを報告します。あなたたちはお終いです。」
次に香純が話し始めた。その内容は煽りだった。やめろその場をヒートアップさせないでくれ。
「元の組織にいたとは言え、実際に育ててくれた人を殺そうとするとか、頭は平気なの?紫苑。人の心ってものはないの?」
「………愚問ですね。あの組織にいる以上、人の心なんて持ち合わせていませんよ。しかも、今あなたは味方でもない。そんなあなたに説教をされる筋合いはありません。」
「か、神楽様!!これは違うんです!!そこの女が録音しているのを知っていて、わざと私たちはあの発言をしたのです!!そこの蘭という男に絶望を見させるために!!だってそこの男は紫苑さんを殺そうとしたのですから!!」
正直、聞いてて恥ずかしくなるような演技だった。そして、羞恥心を思い出させてくれるような嘘だった。だから俺は笑ってしまった。
「ハッ。見苦しぃなぁ。お前ら。そんな言い訳してねぇでとっととかかってこいよ。こちとら数週間で溜まったストレスを吐き出してぇんだわ。」
俺はそう言いながら、紫苑とフェイドの前に立った。あの嵌められた時とは違う。今回は全力でこいつらをねじ伏せるつもりだ。あの時みたいに変に反撃しないで嵌められたら嫌だし、何よりも俺は人間であるがゆえに、俺の実力を、圧倒的なまでの戦力差を見せつけてやりたかった。だから俺は笑いながら戦いの火蓋が切られるであろう台詞を吐いた。
「始めようぜ?本気の殺し合いってやつを。」
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