21話 最強の殺し屋が拷問される!?

 牢屋のような場所に連れてこられ、数時間が経ち、今から事情聴取が行われようとしていた。俺の両手には手錠のような物が付けられており、椅子に縛られ身動きが取れない状況だった。


「……さみぃな…。」


 俺はそう呟く。牢屋は灰色に染まっており、外の光が全く入ってこないせいか、冷え切っていた。手足が冷え、体温も心なしか下がってきてるような気がした。


 目の前にはペンチやら小刀やらが置かれた机のようなものがあり、それと俺を交互に見る男がいた。事情聴取というよりかは拷問と言った方が正しいだろう。現代の法で拷問は禁止されてるはずなんだけどな。だが、俺のような殺し屋が存在するように、ここの家系みたいなところが法を犯したところで、すぐに揉み消すことができるのだろう。金さえかければ警察や政府なんて足止めできてしまうし、事件なんて無かったことにできてしまう。


「………それで俺を拷問すんのか?」


 目の前の男に、俺はそう問いただした。こんなことを質問したが、拷問をするのは確定だろう。だって目の前の男はペンチを掴んでいたから。それで俺の爪を剥いだりするのだろうか。流石の俺でも、手錠で繋がれている上に椅子に縛られているのに脱出をすることなんてできない。つまり、俺がこの拷問を受けることは確定事項なのだ。


「そうだが、怖いか?安心しろよ、吐けば楽になるから。」


 恐らく拷問官であろう男は、まるで拷問をするのが好きかのような嬉々とした表情を浮かべて、俺にそう言った。拷問する時にそんな表情を浮かべるのは狂っているなと、少しだけ感じてしまった。無情になるならまだしも嬉しく思うって……こいつどんな神経してんだよ……


「何を吐けば良いんだが………」


 俺がそう呟いてる間にも、男は完全に迫ってきて………俺への拷問を始めた。爪を剥いだり、小刀で死なない程度に刺したり、切り傷をつけたり。


 質問の内容は様々なものだった。なぜ柊紫苑を殺そうとしたのかや、なぜ貞明のご飯に薬物を入れたのかなど。だが、貞明の飯のことならまだしも、紫苑を殺そうとしたのは完全なる誤解だ。だから俺はそう訴えていたのだが、この屋敷の奴らは聞く耳を持ち合わせていなかった。だからこの拷問は結構続いた。何日?……いや、1週間か2週間くらいは続いてるのかもしれない。零が暴走する気がしてたまらなかったが、とりあえずは今の状況を打破するしかない。零には事情を言えばなんとかなるだろう。事情が事情だしな。


 ……だが、こんな状況を打破すると言っても、俺1人の力では何もできないのだ。牢屋が開くのは飯が運ばれてきた時とトイレに行く時だけ。でも、その時も手錠はついたままだしがっちり拘束されていて身動きは取れない。その時に脱出をしたりするのは愚策だ。だったらどうするか。そんなことを考えていると、拷問を担当している奴が近づいてくる音がした。


「………ほんと、なんでお前は認めないんだよ。紫苑様を殺そうとしたことを……」


 拷問官は呆れた様子だったが、実際に殺そうとなんてしていないのだから仕方がないだろう。俺は人間だ。ゆえに冤罪なんてかけられたくない。それに、認めたら認めたで殺されるに違いない。だからこそ、俺は認めていない。認めるわけにはいかない。恐らく今回の事件は元の組織が絡んでいる。紫苑が俺を嵌めたことが一番の証拠だ。


「……てか、なんでお前は平然としてるんだよ……痛くないのかよ………」


 拷問が続く中、当たり前のように俺は思案を巡らせていた。お陰で拷問官の男は、自分の拷問が俺へ通用してないことに少しだけ自信喪失をしているようだった。だが、こんなもの俺からしたら大した苦痛ではない。いや、苦痛なのは確かなのだが


「こんな程度の痛み、耐えられなきゃ生きてなんていけなかった。だから俺は耐えれてるんだよ。」


 俺はそう口にした。その俺の言葉に拷問官は目をまん丸にして驚いていた。


「意味がわからん。耐えなきゃ生きていけないって……どんな世界でお前は過ごしてきたんだよ……」


 まぁ、驚愕するのも当然だわな。拷問を耐えなきゃ生きれない世界って本当になんだよって話だ。意味不明である。でも、俺は耐えて耐えて、耐え抜いて生きてきた。耐えなければ全てを失ってしまうから。結果的に俺はわけだが。


「…そんで、今日の拷問は終わりなのか?だったら早く消えてくれ。考え事をしたいんだ。」


「……本当にお前は意味がわからん人間だよ……」


 男はそう言い残して去っていった。考え事というのはこの状況をどう変えるかということだ。だが、考えてはいるが八方塞がりな状況だ。できることが少な過ぎて難しい。だったらどうすれば良いか………と、俺が考え始めてから少し経った時だった。少しだけ懐かしい気配が近づいてきた。最近は会っていない存在。少し前、俺がこの屋敷に来て護衛をすることになった人物。拷問や殺しなどと言ったことと無関係なお嬢様がこんなところに来ても良いのかと疑問に思ってしまったが、逆に言えばお嬢様だからこそ、こんな物騒なところに来れるのだろう。そいつは俺の目の前まで来て、俺を一瞥してからこんな言葉を告げるのだった。


「……。」


 そんな、過去形とは言え、自分の護衛になった人物に言うべきではない言葉を、こいつは吐き捨てるように言ったのだった。



 

 そろそろ零ちゃんの出番くるので楽しみにしててください。ちょっとした活躍を見せてくれます。(少しだけど)

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