17話 最強の殺し屋はデリカシーがない

 目が覚めた。誰かの気配が侵入してきて勝手に目が覚めるのではなく、自然に目が覚めた。そのせいもあるのか、心地よい目覚めだった。


 あれから今日の朝まで、神楽はうなされなかった。起こした甲斐があったもんだ。


 俺は起きたので神楽に挨拶しようと思い、左側にある大きすぎるベッドに視線を移したのだが、そこに神楽はいなかった。


「………トイレか?」


 人間であれば誰しもがトイレに行くものだ。まぁ、女のトイレは長い時があるし、俺は俺でこの間で少しだけ動かせてもらおう。


 そうして俺は部屋を探索し始めた。裏切り者がいるのなら、神楽の部屋に盗聴器やら監視カメラやら色々とあってもおかしくない。だから俺は任務でよく仕掛けるような位置を重点的に探した。


 結果から言うと、かなりの数を見つけた。箪笥の中やぬいぐるみの中、ベッドの中など、さまざまな位置に仕掛けられていた。だが、俺は気がついていないふりをした。おそらく、裏切り者には俺が世界最強の殺し屋と呼ばれていることを知られているだろう。まぁ、今回の任務を知っている人物しか俺の正体は知らないのだが。まぁ、警戒されていることは確かなので、俺は無能を偽ることにした。


「監視カメラとかあると思ったんだがな。あるとしても見つかるような場所には置かないか………まぁ、見つからないってことは仕掛けてないってことなんだろうな。」


 俺は一人でそんなことを呟き、やることも無くなったので部屋でくつろぐことにしたのだった。


 本棚を見ると、何やら興味深そうな本がたくさん並べてあった。だから俺はその内の一冊を手に取り、読み始めた。3ページくらい進んだ時、神楽が部屋に戻ってきた。


「トイレか?」


「デリカシーが欠如してるわね、あんた。」


 本当のことを聞きたいだけなのに突如として馬鹿にされる俺。常識というものをしっかりと学んだほうが良いだろうか。と、そんなくだらないことを考えて過ごした。


 しばらく経ち、俺は立ち上がった。


「どっか行くの?」


 神楽にそう問われ、俺は横目で視線をやりながら


「少し便所だ。」


 とだけ呟き、俺は部屋を出るのだった。もちろん、便所に行くわけではない。少し様子を見に行くのだ。


 そうしてしばらく歩き続け、ある場所にやってきていた。前を見ると、白い衣服を着た男や女がせっせと働いていた。


 ここは食堂だ。伊集院家は家というよりも館といったほうが良いレベルの家に住んでいるので、食堂や大浴場と言った豪華なものが沢山ある。そしてここもその一つというわけだ。そして、なぜ俺が食堂に来たのか、それには明確な目的があった。


 俺はゆっくりと歩きながら働いている人たちの方へ進んだ。そして、1番近くにいたその男に声をかけた。


「なぁ、何を作ってんだ?」


 すると、俺の存在に気がついていなかったのか、少しだけ驚くその男。


「あなたは…昨日から来た神楽様の護衛の方ですか?」


「……知られてたのか…」


「はい。今日の朝に全員の部屋に手紙が入っていました。気づいてるかもしれませんが、写真付きであなたが護衛になったというお知らせが届いたのです。」


 早速任務の重要な部分を遂行できなくなってしまったわけだ。まぁ、最悪裏切り者さえ見つけ出せば良いのだろう。気にすることでもないと、そう結論づけたは俺は純粋な世間話を丁にして話を続ける。


「そんで、何を作ってたんだ?朝飯か?」


 俺のその問いにニコニコしながら頷く男。


「はい。今日の朝食を作ってます。良ければご一緒しますか?」


「あぁ。そうさせてもらうよ。」


 迷うことなく即答する。そして、俺はキッチンの方を見据えながら、あることを聞いた。


「料理に少し興味があるんだが、少し見学しても良いか?中に入って。」


「良いですよ。お好きなだけ見ていってください。」


 キッチンに入る許可を得ることができたので、俺は堂々とキッチンに入る。そして、辺りを見回す。


「少しくらい手がかりがあると思ったんだがな。」


 そう呟きながらも、出ている調味料などを一つずつ確認していく。一般的な調味料と色の違いや匂いの違いなどを調べていく。


「あの…何をなされているのですか?」


 さっきの男が聞いてくる。


「いや、少し興味が湧いただけだ。別に理由なんてない。」


 それからほぼ全ての調味料を調べ、俺の手の中には、3個ほど小さな小瓶に入った調味料が握られていた。別に今から俺を盗もうとなんて思っちゃいない。ただ、少しばかりいじらせてもらうだけだ。


 調理人をよく見れば、誰に作るのかという括りで担当を決めているようだった。詳しく言えば、伊集院貞明の料理を作るグループと、神楽の料理を作るグループで分かれていた。そして、俺が持っている調味料は、神楽のグループに置かれてあったものだ。そして、今から俺がすることは、この調味料を伊集院貞明のグループのと入れ替える。これをすることによって何が起こるのかは、後でのお楽しみというやつだ。


 そして、誰にもバレないように入れ替えを成功させた俺は、さっきの男に礼を言い、部屋に戻るのだった。





 最近ヤンデレちゃんこと零ちゃんの出番が少ないですが許してください。それとストックがあったので毎日投稿できましたが、ストックが切れたので毎日投稿はできないです多分。毎日投稿しているのが他にも一つだけあるので、よければそっちの方も是非見てください。

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